#  327

古谷暢康×坂田明
2011年3月19日(土) @ビッチェズ・ブリュー(白楽)
Reported by 多田雅範 Photos by 相本 出

じつに迫力ある刺さるようなフリージャズに耳がブラッシュアップされた。これがウワサの古谷暢康か。ジャズ誌Jazz Japanの編集部も来ているし、NHKのかたがたも来場されている。わがJazz Tokyoの稲岡編集長も、これはわたしにとってオヤジみたいなもの、コーラならあるぞと声をかけてくるが、何と当日ビッチェズ・ブリュー店主杉田誠一が両足骨折し入院したという、駆けつけた横井一江さんとふたりで厨房に入り洗い物をする、刹那、午後7時ぐらっとお店が揺れる、古谷暢康、坂田明はじめ皆が身構える、属性なしの共同体のことばがわく。

古谷暢康のサックスが咆哮する。あのすさまじいCD『シュトゥンデ・ヌル Stunde Null』を斬り付けたエッジだ。フリージャズのいちばん美味しいところが次々と鳴りまくるカッコよさ、その強度は欧州シーンで独走しているに相応しいものだと言っていい。同時に、坂田明が、66さいになった坂田明、欧州で伝説として語られる『キアズマ』の坂田でも、DADADAオーケストラの坂田でもなく、ひょろひょろと独奏するようなインプロヴァイズの糸を紡ぐうちに、さまざまなものを召喚しているのにおののく。それは、・・・たぶん、ユーラシア?モンゴル?、次々とサックス、クラリネット、フルート、打楽器を繰り出している古谷のサウンドの中で坂田明が仏像のようになって有機的な芳しい成分(としか言いようのないもの)を呼び出して放っている様相なのだった。だから、自然にマウスピースからくちが離れておのれの喉が欲するかのように民謡のような成分を発声し始めるのも。

演奏中に煙草を吸ったひとがいて、坂田は演奏の途中、「んぐ!たばこ!」と叫びながら。それすらも演奏に紛れ込ませられるのも、坂田の懐のありようか、と。管楽器デュオで苦しい演奏であるのに不謹慎な感想です、すいません。

インプロヴァイズの演奏はずいぶん聴いたが、ここにあるのはフリージャズで、また古谷の斬り付けるようなフリーと、坂田の召喚するフリーとが併走し、ときに干渉する、それぞれに異なるフリーが出遭っている。言葉遊びに思われるかもしれないが、インプロとフリーは起動エンジンが異なるものだな、と、改めて思うところもある。演奏には、その演奏家の歩みが刻印されている。初めて古谷暢康のCDを聴いたときに「おいおいテン年代にどフリージャズかよ」と思ったのもわたしだが、Sightsongというブログ(http://pub.ne.jp/Sightsong/?entry_id=2095760)で古谷のマウスピースはかの高木元輝(『モスラ・フライト』を聴け)譲りのものだと知り、杉田誠一が聴いた一音のフルートのエピソードを知り、竹内直や加藤崇之、佐藤えりか、斎藤徹、坂田明、さがゆきとのセッションが組まれていることを知り、ついにライブにやってきた。古谷暢康のブログ「ジャズ・日本時間26時は訪れない」(http://zurnazen.exblog.jp/12793977)を読むと、この滞日には救いようのないようなことが書かれているけれど、そうでもないような気がする。これだけのミュージシャンとの邂逅が何も残さないとは思えないのだ。

ゆうべから古谷暢康の演奏が耳に鳴りやまない。ゲヴァントハウス管弦楽団も、アンドラーシュ・シフも、橋爪亮督・吉野弘志・市野元彦もライブで聴いて、スフィアン・スティーブンスもポール・モチアンもセルゲイ・シェプキンもCDをまわしているのだが。この鳴り止まない古谷暢康のサックスとクラリネットが何かを掻き立てている。・・・この謎が、謎としか言いようのない衝動が、おそらく古谷暢康の魅力に触れていることだろうと思う。







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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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