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坂田 明+古谷暢康 デュオ
2011年3月19日 @Bitches Brew 横浜・白楽
Reported by G2us高谷秀司 Photos by 相本 出

私は、元来フリージャズというカテゴリーが嫌いだ。
形式がないということを売り物にする不自由さ・・・
フリージャズというジャンルをわざわざ創ろうとする試みがいやだった。
フリージャズなんていいながら、ものの見事に、既成概念のとりこになっている音たちが大嫌いだった・・・。

そんな私に、この二人のデュオは、お灸をすえてくれた。

古来鍼灸(しんきゅう)に関する書籍は、たくさん出版されているが、それは、どのように治療すれば効果が上がるかという方法論が中心で、なぜ、鍼灸が効くのかという説明を十分にしたものは少ない。

じゃあ私が、なぜこの鍼灸が効くのか、つまりこの二人がなぜ効くのか・・・語ろう。

坂田明に関しては、語られ尽くしているので、古谷について語ろう・・・

一言でいえば「私たちの中にある混乱を音にできるミュージッシャン」。
ある意味、大衆の心の代弁者。
古谷が様々なリード楽器を用いて、大衆の心を代弁している。
古谷に問う。「代弁者ということに責任を感じていますか?」
勿論、彼は、「全然ないよと」答えるだろう・・・
「自分以外の人間になんて責任は持っていない。」と、怒り出すかもしれない

ある部分ではそれは、あたっている。
しかし、古谷は古谷の経験を奏でることによって、人々の感情を代弁してあげられることに、本人自身が気づいていない。

私という表現者に刺激を与えられるということは、私の音楽やアートの中に透明な古谷が棲み込むということで、自分の透明性を心から大切に思っている古谷にとっても光栄なことであるはずだ。しかし彼はそのことにあまりにも、無頓着。そこが、また魅力的である。
古谷は私の中に確実に棲み込んで、私の芸術をサポートしたり、インスパイアしたりできる。一度聞いた彼の音が、随分と尾を引くのである。現に、ライブのあった日は、私は一晩中寝付くことができなかった。

古谷の前に古谷なし。古谷の後に古谷なし。
古谷氏はミュージシャンズ・ミュージシャンという言葉がそのまま当てはまるミュージシャンである。

そんな古谷と、坂田明のデュオは、微妙な探りあいの段階を過ぎると、まるで、熟練した武士同士の格闘になり、死闘、そして調和。
坂田のサックス、クラリネット、古谷のサックス、クラリネット、縦笛、民族楽器の数々・・・
が、先の先、後の先、先の後、後の後、この四つが相見(まみ)えて乱れ飛ぶ。複雑にそして時には整然と・・・。

先の先・・・ 先に撃とうとする相手より先に打つ。
後の先・・・ 後に撃とうとする相手に先に打つ。
先の後・・・ 先に撃とうとする相手に先に打たせて後に打つ。
後の後・・・ 後に撃とうとする相手に後で打つ 

格闘技というのは通常では、戦いであり、殺し合いであるはずなのに、ある時点から、見事な調和を図っていく。
この二人の目の前にいる聴衆は、戦いが調和していく渦の中に巻き込まれていく。
そして、この渦に飲み込まれていく。そしていつしか彼らが代弁してくれた自分自身を一緒に奏でている。

精神の世界でいくと、もし過去の偉人に譬えるなら、
ドストエフスキーと親鸞が会って将棋をうっている感じ。
どちらがどちらであるかは、読者の見識に任せよう・・・。

私は、この将棋の棋譜をしばらく追いかけることにする。
そうすれば、この私にすえられたお灸の意味がわかるような気がする。





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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
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カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
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#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

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#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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