『Dans les arbres』

ECM 2058

Xavier Charles clarinet, harmonica
Ivar Grydeland acoustic guitar, banjo, scruti box
Christian Wallumrod piano
Ingar Zach percussion, bass drum

1.La Somnolence
2.L'Indiffe´rence
3.Le Flegme
4.L'Engourdissement
5.Le De´tachement
6.La Froideur
7.L'Assoupissement
8.La Retenue

Recorded in July, 2006 at Festiviteten, Eidsvoll - Norway
All music composed by Dans les arbres
Mixed and mastered by Thomas Hukkelberg
Produced by Dans les arbres
Cover photo by Manos Chatzikonstantis

やや、と思って店頭で手を伸ばしたのは、ジャケに「Wallumrod」の名前を見つけたからだ。クリスティアン・ヴァルムルー。現在のECMを代表するピアニスト。と、個人的には言っておきたい。ノルウェー出身。アンサンブルのなかに深く潜り込んで、ひたと身を隠す、そういうピアノが身上。謙虚、かつ、ストイック。今作は、Dans Les Arbres という新ユニットの一員として登場。アコギとパーカッションとクラリネット、そしてピアノ。ノルウェーのフリーミュージックの重鎮ふたりIngar Zach とIvar Grydeland のセッションに、ヴァルムルーが参加したことが契機となって誕生したユニットという。いいたかないが、地味は地味。4者がひっそりと音を紡ぎ出しあって織り上げるサウンドスケープにはストーリーもドラマもない。「半睡」「無関心」「沈着」「無感覚」「超然」「冷淡」「鎮静」「自制」といったタイトルが示す通りの、抽象的な音像の連鎖。とはいえ退屈なわけじゃない。天然リバーブの効いた空間のなか、個々の楽器はそれぞれの楽器が持つ文脈を離れて、まったく異なった音を響かせる。それはときにエレクトロニクスのようにさえ響く。すべてアクースティック楽器による演奏なのに、である。ざらついた空気のなかを音の粒子が煙のように充満していく。クリアなサウンドなのに、匂いがする、目に沁みる。でも、人の気配はそんなにしないのだ。音の背後に、ヴァルムルーをはじめ4人の演奏者はじっと身を潜ませる。みんなが寝しずまった真夜中、楽器が演奏者もないままに勝手に鳴り出したかのようなマジカルな空間が、そこに現出する。JT

(若林 恵)

*関連ディスク
http://www.jazztokyo.com/newdisc/
357/wallumr.html

http://www.jazztokyo.com/newdisc/
360/maurer.html


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