『Rebecca Martin/The Growing Season』

Sunnyside Communications SUNY-281178

Rebecca Martin (vo, ac-g)
Kurt Rosenwinkel (g, p, key, elp, tack-p, vib)
Larry Grenadier (b, elb)
Brian Blade (ds, per)

1.The Space In A Song To Think
2.A Million Miles
3.Just A Boy
4.To Prove Them Wrong
5.What Feels Like Home
6.Lullaby
7.As For You, Raba
8.After Midnight
9.Make The Days Run Fast
10.Free At Last
11.Pieces
12.Talking
13.You're Older

Audio Mixers: James Farber; Kurt Rosenwinkel

レベッカ・マーティンって誰だっけ? ジャケットに映っている貫禄のあるおばちゃんがご本人?
うーん、名前に聞き覚えは確かにあるんだけど……。裏を見て、どうやらシンガーソングライターだってことはわかった。さらにバックのメンツを見て目を剥いた。ギターにカート・ローゼンウィンケル、ベースにラリー・グレナディア、ドラムスにブライアン・ブレイド。いや、豪華。購入後、友だちに電話で聞いてみる。「レベッカ・マーティンって誰だっけ?」「ワンス・ブルーでしょ」と、即答。あー。はいはい。そうでした。90年代にニューヨークのフォーク・シーンで異彩を放った、男女二人組のデュオ。相方は、ノラ・ジョーンズ、マデリン・ペルーとの仕事で知られるジェシ・ハリスだ。グランジ/オルタナティブの時代に、グリニッチヴィレッジの良心を継承する音楽家として、歌もの好きが密かに愛好していたことで知られている。あのワンス・ブルーのレベッカ。デュオ解散後、数枚ソロ作を発表し、評論家筋の受けはよかったようだが、残念ながらブレイクするには至らなかった。
気づいてみたら、すっかりおばちゃんだ。でも最新作となる本作は、でっぷりとした容姿に反してぐっとスリム。かつてないほどソリッド。ジャズでもない、フォークでもない、甘さと辛さの狭間にある歌声は味わい深くもすゞやかで、その声を、豪華ジャズメンたちが、堅実にサポートする。カートの浮遊感たっぷりのギター、ブライアンの不必要にスウィングしないタイトで乾いたドラミング(スネアの音のカッコいいこと!)。全体の肌触りは、言われなければ、北欧ものかと聴き紛うような透明な空気に満ちている。メロディにしたって、決してべたべたしていない。クリシェを排したクールな旋律は聴けば聴くほどに味わいがましていく。ジョニ・ミッチェルを持ち出すまでもない。ジャンルの様式を超えていくエバーグリーンな歌なのだ。一言で言って、清潔。冬の晴れ間のような、清々しさ。ジャズファンもSSW好きもきっと気に入るはずだ。JT

(若林 恵)

(2月26日〜3月1日、Cotton Club Japanに出演決定。国内盤『レベッカ・マーティン/実りゆく季節』は、2月9日、ビデオアーツ・ミュージックより発売予定)
*試聴サイト:
http://www.hbdirect.com/
album_detail.php?pid=1036645

*Cotton Club
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/
schedule/detail.php?id=346

Close >>