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『高橋悠治/バッハ:ゴルトベルク変奏曲』
エイベックス・クラシックス AVCL-25026 ¥2,520(税込) 録音:2004年7月6〜8日 笠懸野文化ホール“PAL” 全曲約37分の快速で飛ばした1976年の前回録音。スピードは推進力とは無縁のまま、破砕されたガラス片が静止した時間内に「バッハの音符の姿」で宙吊りにされていた。そして28年を経ての再録音。90年代以降の高橋悠治を聴き続けてきた者ならわかるように、いまや、かれは音楽を音の構造のなかに求めてはいない。たとえば、身体が宿している楽器や音との重畳した関係性。あるいは、生まれ、消えさる音が辿る「場」の気配、そこによりそう精神の作法によって成立する音楽のかたち。だから、今回のバッハでも、まず能率的な運指が疑問に付され解体される。つぎに、理想的な解釈をめざした登攀の否定。いつだって、解釈は後付けの行為。そうではなく、バッハという「場所」のなかで、できるかぎり記憶も予感も投げ捨てて、瞬間的な出逢いと喪失の連鎖を味わいながら、一歩ずつ前に進むこと。そこに現れてくる景色や感動が、規範である必要はべつにない。 (堀内宏公)
JT
http://eee.eplus.co.jp/MV/0409/017/
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