# 1263
『Eve Risser/des pas sur la neige』
text by Kazue Yokoi 横井一江
全編プリペアード・ピアノによる即興演奏。音の中から立ち上がってくるようなある種の情景
今年「ホワイト・デザート・オーケストラ」を率いて、フランスのジャズ祭だけではなくメールス・ジャズ祭にも出演したイヴ・リッサのソロ・ピアノ・アルバム。イヴ・リッサはフランスの若手ピアニスト。2009年から2013年にかけてフランス国立ジャズ・オーケストラのピアニストを務め、ユーコ・オオシマ(ds)とのデュオ「ドンキー・モンキー」、北欧のミュージシャンとのユニット「ザ・ニュー・ソングス」(ソフィア・イェルンベルグ Sofia Jernberg (vo)、ダヴィッド・スタケナスDavid Stackenas (g)、キム・ミール Kim Myhr (g, zither))やセッションで活動、ジャズ・即興音楽シーンで頭角を現してきたミュージシャンのひとりである。
本盤は全編プリペアード・ピアノによる即興演奏。最初のトラック<des pas sur la neige>(雪の上の足音)では、弦をかき鳴らしたり、ボーイングなどの特殊奏法に通常の打鍵を織りまぜ、淡々としたプレイからより多層的なアプローチへと演奏が展開する。硬質でシロフォンのようなサウンドにドローンを利かせて始まるトラック2<des pas sur la ville>(街の足音)は、ガムランのような響き、そしてトラック1同様に多層的なアプローチへ。最後は弦をこすり、それが共鳴する音で終わる。そして、聴覚を更新するかのように静かな音響ではじまるトラック3<la neige sur la ville>(街の雪)。エレクトロニクスと点描的な打鍵音、弦を擦る音などを重ね、多彩な音響効果を利用したサウンド・スケープの前半部。対称的に後半部はよりパーカッシヴに、ノイジーにピアノという楽器のダイナミクスも活かした演奏から、再び音響的で静かなエンディングヘ。リッサはプリペアードや特殊奏法も打鍵も音楽・音響的な表現として同列に用いている。いずれのトラックもイマジナティヴな音空間が構築され、タイトルが喚起させるのか、ある種の情景が音の中から立ち上がってくるようだ。
横井一江(Kazue Yokoi)
北海道帯広市生まれ。The Jazz Journalist Association会員。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。海外レポート、ヨーロッパの重鎮達の多くをはじめ、若手までインタビューを数多く手がける。 フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年〜2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)。趣味は料理。
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