Sound Directions/The Funky Side of Life
『Sound Directions/The Funky Side of Life』

Stones Throw Records STH2124 (2005)

Morgan Adams III — organ, keys, voice
"Sloppy" Joe Johnson — drums, percussions
Derek Brooks — electric muffle bass, synth
Otis Jackson Jr. (aka Madlib) — kalimba, drums, voice, sound effects, keys

produced, arranged, mixed by Madlib

前にも一度紹介したヒップホップの鬼才 Madlib [→NewDisc #42]。Yesterdays New Quintet という架空のバンドを通してずっぽりディープな「今どきのブラック・ジャズ」を模索してきた彼が、ようやく生身のバンドを引き連れて新プロジェクトを始動! となれば、これはやっぱり聴いておきたい。とはいえ強烈なホーンのリフが飛び出してきては、それを得意のダブ処理でぐにょっと異様な空間をつくりあげてしまう冒頭からして、すっかりマッドリブ節なのだが、にしても、サンプリングではなく演奏そのものを主体として練り上げられたものだけに、ジャズ好きにとって、とっつきやすさは過去一番かも知れない。あえてジャンルわけするなら「ジャズファンク」ってことになると思うのだけれども、ここで評価すべきはその折衷感覚とかサンプリング感覚ではなくって、もっと、何か本質的な、かつてジャズが持っていた(はずの)密度だったり、体温のようなものを盤のなかに封じ込めようとしたところにある、という気がする。ジャズのファントムをつかまえる、とでもいうのか。死体からエクトプラズムを取り出す、とまで言ってしまうのか。ヒップホップとジャズのフュージョンってのは別に珍しくもないし、いまさら面白くもないのだけれども、マッドリブの音楽はそれとは異なった次元で、「ジャズ」としか呼びようのないものになっているところが重要だ。たとえばマイルズの「オン・ザ・コーナー」や「アガルタ」を「ジャズ!」と言い切った後に続く道の上にあるものとしてこれは聴かれるべきなんだろうと思う。あるいはここは思い切って「マイルズが生きていたらマッドリブと組みたがったはずだ!」と、言ってみてもいい。そうすれば、少しはジャズファンも興味をもって聴いてくれるのかしら。どうなんだろう。 JT
(若林恵 wakabayashi, kei)

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