text by Kimio OIKAWA
コントロール・モニター・シリーズとして、JBLを代表する超人気機種の新製品だ。ミッドレンジのドーム型ダイアフラムに強烈なインパクトを受けて、これは絶対に聴かないと気が収まらないと、JBLの試聴室に駆け込んだ。
このコントロール・モニター・シリーズは、4321GY (1970年代)から始まって綿々と受け継がれてきた名器で、ホールの音響調整室等をのぞくと、しっかりと目に付く。
スピーカーとしてはブックシェルフと称せられるように小振りだが、聴きたいところの要点を押さえた、しっかり者なのだ。
また、ジャズ派のオーディオとして、部屋の邪魔にならないサイズが好まれて、家庭用ジャズオーディオとして人気が高い。
その最新モデルで、見た目にも進化した!と、見た目の印象が強いが、聴いた音も、衝撃的だった。
最新鋭だけにデジタル熟成のサウンドに軽々乗って、聴覚にすっきりと浸透する。最新盤優秀録音のスティーヴ・ドブロゴスの鋭角に切り取った様な音の輪郭に、穏やかな空気層を感じる。早々と、ミッドレンジのドーム型の実力拝聴だ。
エンジニアのヤン・エリック・コングスハウクは、おそらくJBLのサウンドは聴いていないと思われるが、もし聴いたとしたら、この表現を、どの様に思うだろうか。さらに発見は、低音の豪快さだ。ピアノの低音域の重量感を感じさせる音造りにビックリさせられたが、4319は、加えて分離の良い低音を表現した。唸りの中に、複数の弦の振動を見ているような感触さえ感じる。
ロバータ・ガンバリーニは、ボーカル録音の優れもので、喉の奥底から発する音像をどう表現するか楽しみな試聴だ。さて、出てきた音は、ソフトで太い音!と一言で表現できる、その変わり方が大きな収穫だ。JBLが新しい方向性のサウンドを提供したな!と感動した。ドブロゴスのピアノに温風の様な空気層を感じたことと一致する。このミッドレンジにチューニングするように、ベースが力強く、まさにウオーキング・ベースが、たまらない。根っこからジャズ魂を突きつけられる感じだ。鳴り方のバランスとして低音域の重量感が、大きく膨らんだ印象だ。
中音域の安定感がすべてを支配し、このゆったりした感触は、心地よさを増幅する。
マイク・デル・フェローの1曲目はキックの聴かせどころがあると言ったら音楽に失礼だが、この低音がどの様に出るかはオーディオ派には聴きどころだ。4310、4312系の小型モニタースピーカーから、最も進化したと印象を強くしたのは、ここだ。キックのアタックが文句なく軽快に再現され、安定感がぐんと増強された。
高音質に耳を傾ける事はアーティストに対しての尊敬でもあると考えると、この程度のシステムで聴く習慣を心がけたいものと思う。
視聴ディスク:
『スティーブ・ドブロゴス/ゴールデン・スランバー ~plays レノン/マッカートニー』
BOMBA BOM23001
録音:ヤン・エリック・コングスハウク
@レインボウ・スタジオ、オスロ 2010年5月5日
録音レヴュー:http://www.jazztokyo.com/column/oikawa/102/column_102.html
CDレヴュー:http://www.jazztokyo.com/column/oikawa/102/column_102.html
CD[_3
『ロバータ・ガンバリーニ/ソー・イン・ラブ』
55Records FNCJ 5529
録音:アル・シュミット@キャピトル・スタジオ、ロサンジェルス
2008年3月、6月
録音レヴュー:http://www.jazztokyo.com/oikawa/disk77/disk77.html
CDレヴュー:http://www.jazztokyo.com/newdisc/553/gambarini.html
『マイク・デル・フェロー/メイド・イン・ブラジル〜過ぎ去りし夏の日』
ONOFF MZCO1202
録音: Rodrigo 'Grilo' Aires@Estudio Acousico, Belo Horizonet,Brazil
録音レヴュー:Aires estudio Acousico, Belo Horizonet,Brazil
CDレヴュー:http://www.jazztokyo.com/oikawa/disk95/disk95.html
及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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