#  1281

『Gabriel Vicens / Days』
text by Mark F. Turner マーク F. ターナー


Inner Circle Music

Gabriel Vicens (g)
David Sanchez (ts)
Jonathan Suazo (as)
Alex Sipiagin (tp,flgh)
Bienvenido Dinzey (p)
Dan Martinez (b)
Leonardo Osuna (ds)
Paoli Mejias (perc)

1. El Teatro
2. Days
3. Morph
4. Prelude to Amintiri
5. Amintiri
6. Doing Circles
7. Comprehend
8. Breaking Through Shadows
9. Justice.

プエルト・リコ音楽学院を卒業し現在はサン・フアンのインターアメリカーナ大学の教授の職にある将来を嘱望されているジャズ・ギタリスト、ガブリエル・ヴィセンスの2作目のアルバム『Days』は、彼の充実した生き様を雄弁に物語る内容となっている。2012年にセルフ・プロデュースされたデビュー・アルバム『Point in Time』から人間的な成長を見せ、馴染みやすくスペイシーな楽曲が人気サックス奏者デイヴィッド・サンチェス、トランペッターで共同プロデューサーのアレックス・シピアジン、そしてカルロス・サンタナのレギュラー・パーカッショニスト、パオリ・メヒアスらの有能なプエルト・リコ出身のミュージシャンを中心とする素晴らしいアンサンブルによって巧みに表現されている。

ヴィセンスの楽曲に見られるリズムはノリが良いだけでなく、音楽を生き生きとドライヴするモダン・ロックのフィールもある。オープナーの<El Teatro>で聞かれるシピアジンのヴェルヴェット・トーンのフリューゲルホーンと対照的に激しいサンチェスとジョナサン・スアゾのサックスのホーン・アレンジがアルバム全体のトーンを決めているといえる。

ピアニスト ビエンヴェニード・ディンゼイの浮遊するコンピングとスイングするスタイルをプッシュするのがドラマーのレオナルド・オスナとベーシスト ダン・マルチネスの揺るぎないタイミングである。10分に及ぶ長尺の<Morph>ではフックのあるメロディーとそれぞれのミュージシャンによる個性的なソロで綾なされている。メヒアスの素晴らしくスイングするパーカッションがフィーチャーされたタイトル・トラックでもバンドの目を見張るシナジー効果が発揮されている。

リーダーのヴィセンスに特別なスポットライトが当てられているわけではないが、彼のギターは目配りの行き届いた細かい動きから正確でコントロールの効いた一撃まで然るべく聴かせどころを披露している。<Prelude to Amintiri>で聞かせる彼のソロは魅惑的で、そのまま愛らしいギターとピアノのデュオに滑り込んでいく。ロック・ワルツ的テーマの<Doing Circles>と情熱的な<Breaking Through Shadows>が聞かせるメロディーとリズミック・シンコペーションのこの上ないブレンドもまた聴きものである。

リスナーは名残を惜しみつつ、快速調の<Justice>でアルバムは幕を閉じるのだが、ヴィセンスはアルバムを通してリスナーに自身の世界観と個性を堪能してもらうことに成功しているといえるだろう。(音楽ジャーナリスト)

*関連リンク;
http://www.allaboutjazz.com/days-gabriel-vicens-inner-circle-music-review-by-mark-f-turner.php?width=1440

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