Mika Marimba Madness 2010
Special Guest : Richard Stoltzman
演奏
吉田ミカ (Marimba)、
エディ・ゴメス(b) スティーブ・ガッド(ds) アンダース・ウィック(p)
Special Guest : リチャード・ストルツマン(cl)
会場 : 青山 草月ホール
日時 : 2010年3月26日(金)
Text&Photo 望月由美
最近、いつのまにか朝はFM放送を聴く慣わしになっている。朝の7時、インターFMの「バラカン・モーニング」。ピーター・バラカンさんの爽やかな語り口と全方位のワールド・ミュージック、間にはさむフライト・インフォメーション、交通情報などもスピーディで朝の気分にぴったり、月曜から金曜まで毎朝楽しませていただいている。そんなある日、ミカ・マリンバ・マドネスのコンサートの招待情報が流れた。ゲストにリチャード・ストルツマンが参加というアナウンスを聴いて、躊躇なく申し込みのメールを発信、翌日の放送で、バラカンさんから当選者として私の名前が読上げられた。宝くじにも当たったことのない筆者が見事、3名の招待枠に当選したのである。
リチャード・ストルツマン(cl) 吉田ミカ(マリンバ)
久しぶりの草月会館ホール、1部は吉田ミカさんのマリンバにエディ・ゴメス(b)、スティーブ・ガッド(ds)、アンダース・ウィック(p)によるマリンバ四重奏による演奏。今年(2010年)の1月、スティーブ・ガッドのプロデュースにより録音された吉田ミカの新作 『ミカリンバ』 に収録された曲が中心のプログラム構成。エリントン・ナンバーの<テイク・ジ・Aトレイン>、<キャラヴァン>やスティーブ・ガッドのオリジナル<ザ・デューク>などが演奏された。マリンバの軽快な一面をフィーチャーして、サロン・ミュージックのようにリラックスした爽やかなステージ展開であった。
エディ・ゴメス(b) スティーブ・ガッド(ds) リチャード・ストルツマン(cl) 吉田ミカ(マリンバ)
これまで、マリンバでは高橋美智子さんの気品のある荘厳な音の響きを好んでよく聴いていたが吉田ミカさんは今回がはじめてである。
吉田ミカさんは1999年カナダのトロント大学で打楽器を勉強し、その後ニューヨークに拠点を移す。マイク・マイニエリに師事しジャズ・シーンに入りガッドやゴメスと交流を深めたという。出身地、熊本県の天草で2005年、2007年、2008年に天草国際音楽祭「アイランドマジック」を企画プロデュースしガッドやゴメス、渡辺香津美、リチャード・ストルツマンを招聘しているとのこと、大変行動力のある方である。
吉田ミカ(マリンバ)
短い休憩をはさんで、2部の冒頭、リチャード・ストルツマン(cl)があらわれ、いきなりメシアンの<世の終わりのための四重奏曲>を吹き始めると会場は一転ピリッとした空気につつまれテンションは一気に上昇。ストルツマンの胸のすくようなスイングにすっかり魅了された。メシアンにスイングと云う表現は不遜と思われそうだが、この曲のストルツマンは猛烈にスイングしていたのである。そのあと、ベニー・グッドマン〜ライオネル・ハンプトンで有名な<フライング・ホーム>で軽く客席の肩をほぐすあたりはストルツマンらしい洒落た選曲である。そして、そのあとにメシアンに次いで最大のハイライトがやってきた。ストルツマン〜ゴメス〜ガッドのトリオ編成でモンクの<ブルー・モンク><ウエル・ユー・ニードント>の2曲。ここでのストルツマンはクラのもつ甘さと強靭さを巧みに交錯させながら飄々としかし朗々と吹く。63年ニューポート、ピー・ウィー・ラッセルのロマンと陽気さを想いおこさせながら、モンクの作品を易々と聴かせてしまうあたり、この夜、もっともテンションの高いシーンであった。エディ・ゴメスの背筋も音もぴしっと立ち、ガッドも4ビートに気合を入れる。ここでの3人はジャズを介して会話を楽しんでいるようであった。
エディ・ゴメス(b) スティーブ・ガッド(ds) リチャード・ストルツマン(cl)
このコンサート、バラカン・モーニングを聴くまで迂闊にも知らなかったがミカさんやガッド・ファンとみられる若い青年層が沢山つめかけ、終演後のサイン会にも長蛇の列ができていた。CDが売れない、というのが合言葉のようになっている音楽界であるが最近のコンサート会場ではよく見受けられる光景であり、ネット配信と対抗する手段としてこのようなフレンドリーなコンサートもひとつの道筋なのかもしれない。
アンダース・ウィック、 E・ゴメス、吉田ミカ、S・ガッド、R・ストルツマン
望月由美:FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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