☆Niseko-Rossy Pi-Pikoe Music Prize No.034 受賞☆
川島素晴 作曲家 1972〜 ニセコロッシ・コンサート・ツアー<079>
ジャズはCD、クラシックはライブに限る、というわたしの信念は揺るがない。
すこし展開すると、ジャズとJポップとフィールド・レコーディングはCD、インプロとクラシックと小沢健二はライブに限る、と、なる。
実感だけからすると、ほんとうにそうなんだが、論理的に考えると単に体験の偏向が明らかになるだけという予感もある。
まあ、ひとには真実が語れないという真実もあることだところで、今回のふたつのコンサートでは共通して黛敏郎の曲がプログラムにあった。5月1日の「奏楽堂の響き3」のときに司会者が、「あさって、京都のコンサートに行かれるかたはいますか?」という。京都仏教音楽祭2010実行委員会が編集出版した『黛敏郎の世界』を、この会場でも急遽販売できることになりました、という。上野でも買って、5月3日の京都でも買ってしまった。
『黛敏郎の世界』。このブログ■http://www.bandpower.net/soundpark/04_gurushin/56.htmにあるとおり、これはたいへんな本である。自作に対するテキスト、貴重な写真ばかりでなく、黛による作曲家論、生活論、また驚くべき慧眼を示した59年時点のモダン・ジャズ論まで、この巨大な知性の片鱗に触れることができる重要文献である。
またしてもろくでもないことを書くのだが、黛敏郎が夢に出てきたことがある。■http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20090114
それから黛のCDを聴いてると、なんだか曲の展開が鳴るより前に見えてくるようなので、これはもう日本中でプログラムにのる黛作品は聴かなければならないなあ、と、思うのである。夢に出てきたのは、この若い頃の黛さんだ。夢の中では「読まないで書きなさい」という、まったく理不尽な気がしていたのだけど、こないだマイケル・ピサロのCDを聴いたときに「理解は体験を妨げる」と書いたときに、なるほどそっちの角度のはなしなのだな、と、思った。
<078>「京都の地での涅槃を聴きにはるばるやってきて、おれ、寝るかー!」
〜祈り〜 京都仏教音楽祭2010 ■http://www.woopie.jp/video/watch/0f6689843edff05b
第1部:「音楽で辿る仏教伝来の道-印度から日本へ-」
第2部:「黛敏郎 仏教音楽の精華」
2010年5月3日(祝) 京都コンサート・ホール 大ホール
第1部「音楽で辿る仏教伝来の道−印度から日本へ−辿った道をアジア各国の音楽でつづります
〈1〉仏教発祥の地 悠久のインド音楽
〈2〉仏陀礼讃の舞楽 スリランカ仏徳讃歎舞楽団
〈3〉華麗なる民族音楽 ミャンマー民族合奏団
〈4〉ヒマラヤを仰ぐ 秘境ブータンの仏教音楽
〈5〉北京八大処に伝わる中国仏教音楽の華 霊光寺佛楽団
〈6〉仏教伝来から1500年。極東に息づく仏陀の教え、日本伝統音楽が仏陀を讃仰する
「天鼓雷音・風炎」作・演奏 / 藤舎呂悦 構成・演奏 / 藤舎貴生 演奏 / 阿含宗修験太鼓
日本舞踊 / 市山松扇・若柳吉蔵・尾上青楓
第2部「黛敏郎 仏教音楽の精華」
・「涅槃交響曲」
・「大佛讃歌」
演奏 / 京都市交響楽団
合唱 / 京響市民合唱団・京都男声合唱団・京都市立芸術大学音楽部声楽科
指揮 / 松下功(社)日本作曲家協議会副会長、東京藝術大学教授
いやいやいや、行って来ましたよ、車で京都まで。このゴールデン・ウィークに、だけど渋滞なく、午前2時に練馬を出て、琵琶湖のそばで朝食をとり、京都の市街へは午前9時に到着。すいすいと祝日の朝の京都をくるまで走り抜ける。壬生寺を散策して天然温泉壬生やまと湯で休憩までできてしまいました。どうしてこれだけの演目が7500円で聴けるのだろう、と、驚いて駆けつけたわけですが、そこは文化都市京都だけあって、阿含宗の特別協賛によって実現したようです。ありがたいことです。
第1部。インド音楽はスクリーン画面のナレーションでBGMになっていたけど、ほかの演奏は見事の一言。10分程度の演奏を次々にステージに現れて、「仏教伝来の道」というよりも、これだけ多彩なアジアの仏教音楽、と、それぞれの演奏のありように眼と耳がわしづかみにされつづける。その土地に根ざした演奏者による演奏、というのは、言葉が基にあるのだろうか、風土だろうか、四肢の関節の動きやしなやかさ、動くリズムのズレの感覚までが、そのオリジナリティを示している。
第1部の最後に演じられた「天鼓雷音・風炎」、こ、これは、一体なにごとなんですか。和太鼓が打ち鳴らされる中、尺八と謡い、さらにステージ前方では3名のはかま姿の男子が日本舞踊を舞っている・・・。どうして3つのジャンルが合わさっているの。意味わかんない。でも、・・・ばっちり決まっている。有無を言わせぬ説得力がある。なんかあっけに取られていたけれど、この日いちばん印象に残った。これは阿含宗のオリジナル楽曲である。
第2部は黛敏郎の2曲。日本現代音楽の至宝「涅槃交響曲」、これはオーケストラを2つ使う曲で、経費はかかるがそれでも脈々と演奏され続けているもの。「大佛讃歌」は阿含宗に委嘱され、大仏が完成した折に初演されたきりの幻の曲。「涅槃交響曲」が始まって、ホールの二階席から天上の響きのように弦楽が鳴り響いてもいて、ほんわかした(語弊のある形容なれど)感触で音楽の中に包まれて行った時点で・・・、こともあろうに、うつらうつら眠りほうけてしまいました・・・。京都の地での涅槃を聴きにはるばるやってきて、おれ、寝るかー!そんで幻の曲のほうでぱっちり目が醒めても、童謡のような宗教歌曲なもので、ありがたいと言えばありがたいわけなんだが。
<079>「作曲家川島素晴の才能におののく」
吹奏楽による奏楽堂の響き3
2010年5月1日(金) 旧東京音楽学校奏楽堂(上野公園内)
第3部 ≪新しい世代へと新編曲≫
川島素晴(1972-) : ファンファーレ’88
川島素晴(1972-) : 吹奏楽のための協奏曲(2010) ※委嘱初演
ほか
第1部「戦前・戦中世代のマーチ集」、第2部「3人の会の音楽」を含めて18曲のプログラムがあったけど割愛。それぞれ楽しかったんだけど、川島素晴のコンポジション2つ、その圧倒に。
高校生のときに書いたという「ファンファーレ」、この躍動、狙いの明白、計算は、まさに天才のひらめきを感じさせる。新作の「協奏曲」だって、この技法を適用させてクールに、まさに響きの結果を狙い定めたような、コンポジション。これ、演奏するの、純粋に楽しいだろ!作曲者は、躁状態を体感する、というのか。限界技法と限界速度を組み合わせただけですよおー、と、川島さんは涼しい顔をして言うことだろう。このあっけらかんとした意図と、吹奏楽の現代的な響き、それから演奏者の楽しそうなこと、聴いているおいらも手に汗握ったまま、スピード、スリル、ショック、サスペンスな爽快に思わず声を上げそうになった。
伝統ある奏楽堂の響きも、ホールっぽくなくて生々しくて良かった。建物とか椅子の雰囲気もレトロで味わい深い。結局、音楽会場というものはホールの音響測定とか設計とか、だけでは割り切れないところがある。ホールの至宝は紀尾井ホールとサントリーホールがあればそれでよい。
川島さんには、現代音楽の作曲家という枠組みからこのように離れたような、明白な意図をストレートに反映させることにかけては抜群の知性があるのではないだろうか。文章を扱う分野で言えば、文豪でも詩人でも評論家でもなく、コピー・ライターのような、時代を動かすちからがあるのではないか。「川島素晴のこういう曲ばっか聴きたいー、だって名前だってストレートでクリアーであれ!という意味でしょう?ゲンダイオンガクの中に居る才能じゃないよー」と、わたしは粗野な感想を叫びながら上野駅まで友だちと歩いていたのでした。川島素晴と菅野よう子が手を組んでアニメのサントラ作るとか。Jポップのアレンジの風景を一変させるとか。
Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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