連載フォト・エッセイ  JAZZ meets  杉田誠一

Vol.47 | マイルス・デイヴィス『ライブ・イン・ヨーロッパ ’67』text by Seiichi SUGITA

龍村仁がNHKを懲戒免職となるのは昭和48年9月のことだからドキュメンタリー『キャロル』の完全版を視聴したのは同・1973年夏である。所は渋谷のNHK試写室。同時に『海鳴り』の完全版も視聴。その数週間前には、『海鳴り』のうら淋しい撮影現場、千葉を龍村自身とドライブする。

試写室で三宅一生を紹介される。「こちら、一生さん」と龍村。「杉田です」「一生です」。再び「一生です」。「杉田です」(いや、「誠一」です、とでもいうべきダッタのかしらん?)。一生なる人には、スレンダーな美女が3人ほど同行。試写後、<壁の穴>でパスタして新宿ゴールデン街へ繰り出す。

「実は、昨日、パリから帰ったばかりなんですが、ここ(ゴールデン街)が一番落ち着きますね」「そうですか?ぼくは3日前、シカゴから帰ってきたんですけど、シカゴの方が落ち着きます」ってな話が続き、まったく話が噛み合ない。実は、あの三宅一生だとは、最後まで分からなかったわけ。

想えば、ぼくのファッションの先生は、ジャズ・アーティストたち。たとえスーツを着ていても、決してスクゥエアにならず、あくまでもヒップだからである。

65年夏、初めて日本橋<三越>でのバイト代はすべてVANのスーツ代に消える。いわゆる3ッボタンのアイビー。とてもボタンダウン・シャツやレジメンタル・タイまでは手が出ない。ケネディ御用達だったというブルックス・ブラザースなんて夢のまた夢?!

VANの戦略にはいつもジャズが流れていた。ジャズ・ミュージシャン来日スポンサーとして必ずVANがスポンサーになり、アメリカン・トラッド=アイビーのバイブル『メンズ・クラブ』はしばしばジャズを特集。70年代に入ってからだけれども、ぼく自身も『メン・クラ』をジャズ(写真&文)でジャック(?)したことがある。VANはまた、ジャズ番組の制作スポンサーの重鎮でもあった。

 

VANと並ぶメーカー、JUNは、池袋にジャズクラブ<JUN CLUB>をオープン。ジョージ大塚トリオ(市川秀男/p、稲葉国光/b)、峰厚介(ts)、豊住芳三郎(ds)らがホーム=根拠地としている。

ジャズはかつてファッション・リーダーですらあった。

2009年12月、未発表映像マイルス・デイヴィス・クインテット『ライブ・イン・ヨーロッパ ‘67』(CBS)を買ってしまう。コレ1枚(DVD)のために、何と32,990円(タワーレコード)も払うはめにあう。コロンビア期の全アルバム70枚(1949~85)のオマケとしてこの未発表映像が付いてくる。『in Paris Festival International De Jazz May, 1949』から『Aura』まで、すべて持っているというのに、だ。紙ジャケかどうかなんてどうでもいい。未発表ボーナス・トラックにもまったく興味なし。全250ペーシのフル・カラー・ブックは透析中の読み物にはまあ、ちょうどいいってところかな。

で、DVDには、1967年11月7日、独・カールスルーエと同・10月31日スゥエーデン・ストックホルムが収められている。パーソネルはハービー・ハンコック(p)、ウェイン・ショーター(ts)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)。ナンバーは、前者:1.Agitation 2.Footprints 3.I Fall in Love Too Easily 4.Walkin' 5.Gingerbread Boy 6.The Theme 後者:
1. Agitation 2.Footprints 3.モRound Midnight 4.Gingerbread Boy 5.The Theme
いやあ、スゲ〜、カッコいい!!
67年といえば、ジョン・コルトレーンが死去した年。「ジャズが死んだ」
なんて陳腐な言いようがここ日本では流布されたけれども、とんでもない。少なくとも、マイルスにとって,コルトレーンはもうとっくの終りに死んでいたのだ。

杉田誠一
杉田誠一:
1945年4月、新潟県新発田市生まれ。
1965年5月、月刊『ジャズ』、
1999年11月、『Out there』をそれぞれ創刊。
2006年12月、横浜市白楽に
cafe bar Bitches Brew for hipsters onlyを開く。
http://bbyokohama.exblog.jp/
著書に『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』
『ぼくのジャズ感情旅行』。
http://www.k5.dion.ne.jp/~sugita/cafe&bar.html
及川公生のちょっといい音空間見つけた >>

1/09 Sat 鈴木勳(b) 雅代Koketsu(as) 井上銘(g)
10 Sun 成瀬信彦(ヒトヒソ館 おどり)
尾山修一 (ts,ss,perc) 板倉克行(p)
11 Mon 名取俊彦[Tonnie](p,g) いのくち ゆきみ(vo)
14 Thu 鈴木勳(b) 秋山一将(g,vo)
18 Mon 小島伸子(vo) KANA(fl) 太田雄二(g)
20 Wed 平原剛(p) 菅井信行(b)
22 Fri 秋山一将(g,vo) 江口弘史(b) 望月孝(perc,g,vo)
23 Sat ジャム・セッション 斉藤華子(p) 堀江大輔(b)
25 Mon 平山順子(as) 佐藤えりか(b)
28 Thu 鈴木勳(b) 雅代Koketsu(as) 井上銘(g)
29 Fri 関根敏行(p) 仲石裕介(b) 黒崎隆(ds)
30 Sat 赤坂由香利(vo,p)
31 Sun ジャム・セッション 名取俊彦[Tonnie](p,g)
JAZZ TOKYO
WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.