ヤコブ・ブロ(g)
トーマス・モーガン(b)
ヨン・クリステンセン(ds)
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ドラッグの代わりに音楽でトリップできるか...
本来、ECMに録音したデビュー作『Gefion』の“レコ発”(レコード発売記念ライヴ。CDになっても口調が良いのだろう、相変わらずこの言葉が使われている)ツアーのはずが発売が来年2月になり、本人たちは肩透かしを食ったような気分だろう。それならJazzTokyoで盛り上げようと「来日直前緊急インタヴュー」を敢行したのだが(この時、ヤコブはブラジルからコペンハーゲンに戻って南アフリカへ飛び、一度コペンに戻って東京を目指す、という超過密スケジュールの真っ最中。インタヴューの回答は機中で入力していたという)、JTはJTで体制奉還でトラブル続出、結局、最終公演直後の更新、というヘマをやってしまった...。彼らにとっては、泣き面に壇密蜂...!?
「クラシックス」に楽屋はあるのかないのか、ヨンとヤコブはガレージに椅子を出して談笑していたのを幸い、挨拶を交わすことができた。ヨンは、ECMの主(ぬし)のひとりだが、生(ナマ)は1979年の「キース・ジャレット=ビロンギング」以来、ヨンによると数年前にヤコブ・ヤング(g) のツアーで来日しているという。僕はヨンと同い年で、ふたりで1978年生まれのヤコブを「ECMがスタートした時、君はまだ生まれてなかったんだ。僕らの息子みたいなもんだよ」などとからかった。若い頃にアイスホッケーで痛めた後遺症が出ているというヨンは、ゆっくり片足をひきずるようにしてステージに上がる。そのせいでもないだろうがこの日はほとんどスティックとブラシでシンバルを使ったカラリングに終始した。1曲、柔和な顔をきっと引き締めスネアを交えて緊張感を醸し出す瞬間があったのだが..。ヤコブは目一杯サステインを効かせたしろたま系が中心で時にディレイを使うなどしたが僕はと言えば正直なところ浮遊感に乗り切れずに終わってしまった。いちばん仕事をしていたのがトーマスで4本の指が忙しくフィンガーボードを駆け巡っていた。隣席の音楽人が「これは、ドラッグをキメながら聴く音楽だ」と結論付けたが、トリップするにはギターのリバーヴが中途半端だし、ベースが忙し過ぎる。ECMの録音ではおそらくシンバルにもリバーヴがかかっているのだろう。ドラッグの代わりに音楽でトリッ プできたら世の中幸せだ。帰りに3枚組のLP『BRO/KNAK』に手を出したら8千円だという。最後だから7千円にすると言われたが、そんなに持ち合わせもないので3千円でヤコブ、コニッツ、フリゼール、モーガンのアナログ『TIME』を手に入れた。ちなみに、この男(マネジャー?)もヤコブという。トーマスが来て菊地雅章の話になった。ECMのアイヒャーから、TPT(トッド、Poo、トーマス)のヨーロッパ・ツアーとレコーディング、菊地のソロ録音を併せて予定していると言われたのだが、一向に時期が決まらないという。このヤコブのトリオに菊地を入れて録音したら、と持ちかけてみたら、「僕にはそんなコーディネーションはできない」と真顔で答えた。トーマスは1981年生まれ。ヤコブよりさらに3つも若い。知合いとタワレコ(ここでもレコードだ)の2階のカフェでビールを2杯飲んでクロージングとした。
*インタヴュー
http://www.jazztokyo.com/interview/interview129.html
ラファエッラ・ガッザーナ(p)
ナターシャ・ガッザーナ(vn)
アルフレッド・シュニトケ: | 古い様式による組曲から |
第3曲:メヌエット 第4曲:フーガ |
ヴァレンティン・シルヴェストロフ: | J.S.B.へのオマージュ |
フランシス・プーランク: | ヴァイオリンとピアノのソナタから |
第3楽章:Presto Tragico |
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日本でもシルヴェストロフがフックになり得るか...
所用で遅れ、駆け付けたときには「ミニ・リサイタル」が終わったところだった。続く「トーク・イベント」では、MCが用意した問いに姉妹が答えた。姉がピアノのラファエッラ、妹がヴァイオリンのナターシャ。「新作でも取り上げたヴァレンティン・シルヴェストロフは、デビュー・アルバムで私たちのプロデューサー、マンフレート・アイヒャーが提案した作曲家で、私たちはシルヴェストロフの存在を知りませんでした。マンフレートにより私たちの目が開かれました」と素直に告白する。シルヴェストロフは、1937年ウクライナ・キエフの生まれで、同時代を生きる作曲家としてかなり特異な存在。アイヒャーはこの作曲家が望郷や回顧といった感覚に拠り所を見出した後の作風に注目し、すでに5作のCDを制作、エストニアのアルヴォ・ペルトと並んでECMのニュー・シリーズを代表する作曲家の地位に押し上げている。アイヒャーはデュオ・ガッザーナというフィレンツェの姉妹デュオをECMからデビューさせるにあたり、すでにヨーロッパでは相応の地位を獲得したシルヴェストロフの作品をレパートリーに取り入れることにより、フックとしたものと思われる。ヨーロッパでは、ECMからデビューすることの意味は、それなりに著名度のあるコンクールで好成績をあげることと同等の価値を有するに至っている。しかし、スター主義、メジャー志向が根強く残る日本のクラシック界ではヨーロッパと同じ評価は期待できないことを姉妹は知ることになるはずだ。アンコールでデビュー・アルバムから武満徹の<妖精の距離>を演奏したが、天井の低いサロンでセミコンという不利な条件も手伝って、武満独特の手触りを充分に表出するには至らなかったようだ。フィレンツェと姉妹都市の関係にある岐阜市の招きで2度目の来日を果たし、日本文学を始め日本の文化をこよなく愛する姉妹は東京でコンサートを開催できる日が来ることを念願しているという。ECMの2作目は、まず自らが音楽することの悦びに溢れ、とくに同郷のダルラピッコラは躍動感に溢れるなどデビュー作をはるかに凌ぐ出来と聴いた。欧米での評価がさまざまなメディアを通じて日本の音楽ファンの目や耳にも触れることを期待したい。
*インタヴュー
http://www.jazztokyo.com/interview/interview111.html
*試聴サイト
http://player.ecmrecords.com/poulenc-walton-dallapiccola-schnittke-silvestrov--duo-gazzana
クリスチャン・プリュヴォ(tp)
田村夏樹(tp)
藤井郷子(p)
ピーター・オリンズ(ds)
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ベルリンに根を下ろした田村夏樹と藤井郷子
土曜日、横浜の港でジャズを聴くために朝10時頃家を出た。4、50分かけて新聞を読み終わる頃にバスが横浜駅に着く。みなとみらい線で「馬車道」駅まで10分弱。iPhoneで『カラパルーシャ』を聴きながら赤レンガ倉庫まで徒歩で約10分。カラパルーシャのテナーの咆哮に脳味噌が目覚める。倉庫前広場で「Oktober Fest」を開いていてすでに大勢のお客がテーブルを占拠、ビールのグラスを傾けながらブルスト(ドイツのソーセージ)を頬張っている。う〜ん、ミュンヘンの「オクトーバー・フェスト」を思い出すなあ。ピルゼン(ドイツのビール)を飲みたい!誘惑を断ち切って海に向かう。頬をなでる浜風がとても気持ちいい。大型台風が近付いているらしいが今日は最高の秋日和だ。
赤レンガに来ると5年前の横浜開港150周年記念のコンサート、高瀬アキ、多和田葉子、川口ゆいの日本人女性3人にルイ・スクラヴィスが加わった「鏡像」の素晴らしいステージを思い出す。考え抜かれたストーリー、演出と高瀬、スクラヴィスの即興演奏がもたらす破調とのからみの妙味。作家・多和田葉子の驚くべきリズム感、ダンサー・川口ゆいの磨き抜かれた身体性。彼女たち3人はベルリンを活動拠点にしていたはずだ。ベルリンで本格的に開花した才能たち。
KAZEの田村夏樹と藤井郷子もベルリンを第2の拠点としてすでに足掛け3年が経つ。ベルリンの壁崩壊以降さらに各国、各地からさまざまなミュージシャンが移り住み、ジャンルを超えた化学反応が起きているという。彼ら自身もすでに、東京、NY、大阪、神戸、名古屋に次ぐ藤井郷子オーケストラ・ベルリンを結成、録音も済ませた、ということなので、すでにベルリンに根を下ろしたとみていいのだろう。ところで、KAZEだが、あるコンサートで対バンとなったバンド同士のメンバーが集まって結成されたという変わった経緯を持つ。アイディアの主はドラムスのピーター。トランペット2本にベースレスというユニークなインストゥルメンテーションだ。キャリア4年で、アルバム2作、今年はオーストリアから韓国経由で日本に入り、日本のあと、ドイツ、チェコ、ポーランド、パリで仕事をこなし、新録も予定しているというから決して思い付きなどという中途半端なものではない。
冒頭、クリスチャンはマウスピースの代わりに長いチューブからトランペットに息を吹き込む。見事な音色だ。ピストンを押すようにチューブを叩くと音が変化する。他にもサックスのマウスピースを使って吹くなど楽器に細工をして多彩な音色を確保することを得意としているようだ。短いサーキュラー・ブリージングを使ったようにも聴こえたがどうだったのか。一方の田村はひと呼吸で吹き切る間にタンやリップ、バルブのコントロールで音色の変化を生み出すテクニックで勝負する。楽器に対して物理的な補助を加えるクリスチャンに対して田村はあくまで楽器を身体の一部と捉え、楽音以外のエフェクト的なサウンドを得るためには鳴りもののトイ(おもちゃ)を使う。意表を衝くユーモラスなサウンドに聴衆の緊張が解かれ、ときには笑いを誘う瞬間である。藤井もプリペアードや内部奏法を駆使してピアノから尋常ならざる多彩な音を弾き出す。ピアノの蓋をボディに激しく打ち付けるなど冷やりとさせる瞬間もあった。他の3者がさまざまなテクニックを駆使してカラフルな絵を描き出す一方、ドラムスのピーターはスナップを利かせたソリッドな音でタテ乗りのビートをむしろストレートに叩き出す。2本のトランペットの長いハーモニーで曲がスタートしたり、オープン気味に始まった曲がカルテットで演奏するテーマでエンディングを迎えるなど、編曲というよりバンドとしての高い経験値から生み出される完全な意志の疎通の実現により、全編を通してバンドが高いレヴェルで自在に動くさまを堪能できた演奏だった。
*インタヴュー
http://www.jazztokyo.com/interview/interview128.html
*CD『KAZE/ラファール』紹介/悠雅彦
http://www.jazztokyo.com/five/five818.html
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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