![]() |
photo by Jeremey Theron Kirby |
3月の終わり頃、カンザス・シティのハーモン・メハリから「5月に東京に3週間ほど滞在しようと思うんだけど、誰も知り合いがいないんだ。どうやったらジャズ業界の人達とコネクションが作れるか、アドバイスが欲しいのだけど、サポートしてくれないか?」というメールがあった。
ハーモンの事は、今回一緒に行動をするまで、それほど深く知らなかった。彼の事は4年前に、『カンザス・シティのとても優秀な若手トランぺッター』として友人が紹介してくれた。その後、彼のCDがリリースされたり、カンザス・シティで何かイベントがある時にメールでやり取りしたり、といった程度の付き合いだった。CDの演奏からは、沢山の音符をパラパラと吹くなかなかのテクニシャン、賢そうな青年、という印象がずっとあった。
ハーモン・メハリは現在27才。UMKC(ミズーリ大学カンザスシティ校)コンサヴァトリー・オブ・ミュージック&ダンスで学んだ。ボビー・ワトソンに師事をし、すでにカンザス・シティのジャズ・コミュニティを引っ張っていく勢いが感じられる。数々のトランペット・コンペティションでも非常に良い成績を収めており、地元ジャズファン達の大きな期待を背負っている。カンザスの友人達の中で、彼のことを悪く言う人は誰1人としておらず、皆、手放しで褒め称えていた。演奏が素晴らしい事はもとより、非常に真面目で礼儀正しい青年、と聞いていた。「ハーモンのことをよろしく!」と何人かの友人達が言ってきた。彼の生演奏がたっぷり聴けるというのも嬉しく、私はすぐにハーモンの申し出をOKした。
ハーモンは4月28日に東京にやって来た。夕方、笹塚の宿泊先にチェックインと同時に、彼の東京生活は始動した。「ホテルに着いてからすぐ、井の頭線で渋谷に行き、ソフトバンクでプリペイドの携帯電話を買おうと思ったんだけど、お店が終わっていた」とメールがあった。初めての日本、東京滞在で、ワクワクだったに違いない。爽やかなお天気の次の日の朝、渋谷のソフトバンクでの待ち合わせに彼は満面の笑みを浮かべ、時間ピッタリに現れた。携帯電話を購入し、ランチを食べに『美々卯』に行った。その時彼が「僕は豆腐が好きだから」ときつねうどんをオーダーし、「出汁の味が美味しい!」と感激したのを見て、私は「この青年は今まで私が何人も世話した若いミュージシャンとは、ちょっと違うかもしれない」と漠然と感じた。
♪ ハーモン in 東京ジャズシーン
その後、新宿でレコード屋を何軒か廻った。彼は何処の店でもCDの品揃えが豊富な事に驚いていた。Pit Innなど主要なジャズスポットを教え、東京のミュージシャンやジャズクラブの事、東京生活に必要な基本事項などをインフォメーションして別れた。別れ際に、「さあ、今晩はどこに行く?」という私の問いに「Introに行ってみようかな!?」という返事。
ここからが、ハーモンの東京滞在の快進撃の始まりだ。
彼はその夜、高田馬場のIntroに行きジャムセッションに参加した。そしていきなり、その場にいた人達のど肝を抜いたようだ。メールでは控えめに「今日はなかなか良かったよ!」と言ってきたが、後からその場にいた日本のミュージシャン達には、「なんか、いきなりガンガン吹きまくるラッパが登場して、おっ、凄いぞ〜!そこからもう、次の僕の演奏にシット・インしてよ!って始まっちゃたんですよ〜!」と聞かされた。
Introから、阿佐ヶ谷のMANHATTANでのジャムセッション、東京倶楽部で演奏中の大森明(以下敬称略 as)、大江陽象(ds)らの演奏にも参加し、滞在3日目にして同じく高田馬場のカフェ・コットン・クラブのジャムセッションにデビューした。ハーモンの感想も「なかなか良いよ!」から「すっごく楽しい!」そして「最高!」となっていった。
以後、彼はクラブでミュージシャンの演奏にシット・インするしないに関わらず、毎晩2〜3カ所のクラブを回り、どんどん友達を作り、瞬く間にコネクションを広げていった。3週間の滞在で回った東京のジャズクラブの数は20強。Introに至っては時間があれば必ず行く、という程に最高に気に入っていたようだ。ジャムセッションはかなり楽しめた様で、カフェ・コットン・クラブやNARU、横浜のA.B. Smileにまで出かけて行き、テクニックはもとより、持ち前の集中力とエネルギッシュな姿を見せて自分をアピールしていたようだ。「あの時、あそこのクラブで吹いてたのはあなたでしょ?!」と、何カ所かで声をかけられた、と喜んでいた。
また、赤坂B flatであった「鈴木良雄:Generation Gap」のライブにシット・インしたところ、台風の影響で観客がとても少なく、鈴木良雄とメンバー達と何曲も一緒に演奏が出来てとても楽しくラッキーだった、と言っていた。
ハーモンが一緒に演奏したミュージシャンは何人程になるだろうか?アマチュアから超一流のプロまで、若手からベテランまで、相当な人数になるだろう。私はハーモンとずっと一緒に行動していた訳ではないので、彼がどんな場面でどんな演奏をしていたか全部は分らないが、彼の演奏はどれも楽しく聴き、彼の色んな顔を見た気がする。どこへ行っても歓迎されて気持良く演奏していたようだ。その場の雰囲気とミュージシャンのタイプで演奏曲目を決めるようだが、選曲も毎回とてもフィットしていた。日を追うごとにに彼の演奏にはどんどん調子が出て来た。
私個人の好みで言わせてもらえれば、中島朱葉(as)のグループ、楠井五月(b)のトリオ、六本木 alfieでの日本ジャズ界の大ベテランミュージシャン達のグループ、これらに参加したハーモンの演奏は特に良かった。中島のグループで演奏した<Milestone>や<Bye Bye Blackbird>からははじける様な若さとエネルギーを爆発させ、ハーモンと同世代の楠井トリオとの<On The Sunny Side of the Street><Polka Dotes & Moonbeams><Sandu>といったスタンダード・ナンバーの演奏には気負いもなく、とてもリラックスさせられて心地良かった。彼の音は甘くマイルドだと感じる。決して元気一杯にパラパラ吹きまくるだけではなく、バラードも聴かせる歌心もある。
alfieのライブは、峰厚介(ts)、増尾好秋(g)、山本剛(p)、鈴木良雄(b)、村上寛(ds)らが行った『alfie 35th anniversary day Live』だった。ハーモンは東京滞在最後の夜だった。メンバー達の暖かく大きなハートに包まれ、思う存分演奏させてもらった、というところだろう。鈴木良雄、増尾好秋を始め、皆に柔やかにサポートされながら、増尾オリジナルのブルースや<Beatrice>をのびのびと演奏するハーモンの姿は印象的だった。
alfieでの演奏終了後、ハーモン東京最後の夜の本当の最後に、彼は東京に来て一番最初に行ったIntroに戻り、楠井五月と菊池太光らとセッションを楽しんだ。
彼が東京滞在中、どんなミュージシャン達と一緒に演奏し、何を感じたかはインタビュー記事を読んで頂きたい。
また、ハーモンは東京倶楽部で知り合った大森明の教える学校で小さなクリニックをやったり、早稲田大学・ハイ・ソサエティ・オーケストラのコンサートマスター、荒牧俊也が主催するトランペットのクリニックに参加した。カンザス・シティでは教えてもいるが、日本でのクリニックについては、まだ生徒のレベルも全体像も良く掴めていないので、多くを語る事は控えたいと言う。
♪ 食べる事が大好き!ハーモン
ハーモンは何事に関しても貪欲である。今回、私が見た素顔の彼は本当に好奇心一杯の楽しい青年だった。昼間もフルに活動し、東京の事は出来る限り知って帰りたいと言っていた。
東京の観光スポットは明治神宮での大感激から始まって、浅草、上野公園、秋葉原、池袋、新宿、新大久保の楽器屋街やコリアンタウン、原宿、東京タワー、六本木、護国寺、銀座、築地など、主要な所はほとんど行っただろう。iPhone一つ持って移動する彼は「東京の地下鉄地図の東西南北はデタラメだ!」と笑っていた。
「Cool Japan」なる言葉が頻繁に使われるようになったが、外国人の目から見た日本の面白さや 情報の質、量は私達の持っているそれとは少し違う。ハーモンの持つ情報も然りだった。
コーヒー好きの彼は、宿泊地から大分離れた清澄白河の『Blue Bottle Coffee』まで、また『Omotesando Koffee』や『Bear Pond Espresso』、南阿佐ヶ谷や代々木八幡のカフェにも頻繁に足を運んでいた。また、銀座にある『TENDER』というバーに名物バーテンダーを尋ねたり、丸の内にあるフランスのバターメーカー『エシレ』のショップにクロワッサンを買いに、京橋『HIDEMI SUGINO』までスィーツを食べに行ったり、あちこち飛び回っていた。勿論ブランドショップだけではないが、挙げたらきりがない。
自宅で猫を2匹飼う彼は、「猫カフェ」がとても気に入り、猫達の写真を何枚も撮っていた。
せっかく東京に3週間もいるのだから、 東京を離れて少し静かな所に足をのばしたら?と鎌倉も案内した。短い時間の小旅行だったが、鎌倉駅前の小町通りのお土産屋を覗き、鶴岡八幡宮でおみくじを引いて一瞬将来の事を真剣に考え、大仏を見て「WOW!」という姿は普通の観光客の青年と変らず、楽しそうだった。
が、何と言ってもハーモンが最高に楽しんだのは日本の食べ物だろう。自ら「食べるのが大好き!」という彼は、「日本にいるのだから、滞在中は日本食で通す!」と、ずっと日本食だった。最初に行った寿司屋で、アメリカとの質の違いに愕然とした。初めて食べた穴子がとても気に入り、築地で包丁と生の穴子を買い、ホテルで煮て穴子鮨を作ってしまったのは傑作だった。
彼には、今回の東京滞在でどうしてもやりたい事があった。ミシュラン3ツ星の割烹料理屋『いしかわ』での食事をすることだ。これは彼にとっては音楽と同じ位大事なイベントだった。私ですら行った事のないこの料理屋に行きたい、と彼に会った最初の日に言われた時は「ちょっと、大丈夫?日本初めてで、いきなり『いしかわ』なの? 別にそこでそんなにお金を出さなくても、いい料理屋は一杯あるのに。」と、かなり呆れたが、そんなのは私の大きなお世話。この店は彼のカンザス・シティの友人で食ブロガー&写真家が選んだ、昨年の世界食べ歩きベスト3に入る店だそうだ。ハーモンはまだお箸の使い方もぎこちなかったが、日本食のマナーもお箸の使い方も相当練習してから行ったようだ。
『いしかわ』は彼にとって、東京の最高の想い出の一つになった。当日、食事の後に「最高の食事だったよ!フェイスブックに写真を1〜2枚載せようと思うんだけど、今、シェフ石川さんが僕を店先まで送ってくれたこの瞬間までのアメイジングな体験を、どうしても真っ先にに知らせたかった。後で写真を全部見せて説明するから、楽しみにしてて!」とメールを送ってきた。その次に会った時に、彼は撮った写真を1枚1枚見せながら、メニューと料理、味。そして器のデザイン、サービスの仕方に至るまで解説してくれた。彼が如何に『いしかわ』での食事を楽しんだか納得した。
こういった体験一つ一つが彼の感性をさらに磨き、今後の音楽にも反映されていく事だろう。
よく、海外のミュージシャン達から、「日本に行きたい・・・」と相談を受ける事がある。ハーモンは今回、自分がアジアで活動したいから、自分で東京の音楽マーケットをリサーチしてコネクションを作りたい、と自分でプランして行動した。勿論、多くの人達に支えられての事だが、彼の行動力とバイタリティ、自分の追求する事に対しての貪欲な姿勢は人一倍と感じる。彼は決して愚痴を言わず、常にポジティブな材料を探し続けている。終わった事は決して引きずらず、次に進む。トコトン前向きである。常に自分がどうしたいか、その時何をすべきなのかきちんと判断して行動に移し、納得するまでやり通す。エネルギッシュであるだけでなく、繊細さもきちんと持ち合わせ、非常にバランス感覚の良い青年だ、と感じる。次に会う時、1年後、さらにその先、どんな演奏をしていくだろうか?とても楽しみだ。
ハーモンはいつも唄っている。歩いていても、レストランや買物をしていてもBGMに合わせて。ジャズ・クラブでは人の演奏にリズムをとり、体を揺すって唄っている。彼がカンザス・シティに帰る前夜、地下鉄の中で、好きなヴォーカリストの話になった。「僕の一番好きなシンガーって誰だか当ててよ。ピアノも弾く人だよ」と私に聞いてきた。「もう一つヒント頂戴!」「娘もシンガーだよ」私はしばらく考えて「ナット・キング・コールかな〜?」と返すと、彼は「当たり〜!」と。
私はその時の会話に何故かとてもほっとした。ハーモン・メハリは、アグレッシブでありながらも、そんな優しい青年でもある。
♪ 活気ある日本の新しい世代のジャズ・ミュージシャン達
ハーモンの東京滞在により、私は多くの日本の新しい世代のジャズミュージシャン達と会うことになった。そして、彼らの演奏の質の高さを再認識させられた。
勿論、ジャズ誌などで名前を目にし、演奏を耳にした事があるミュージシャンも数多くいた。ハーモンと同年代の楠井五月、菊池太光、福森康らの演奏はとても爽やかだった。福井は、今回、ハーモンが一緒に演奏した中村恵介のバンドでベースを務める金森もとい同様、先号のJazz Tokyoの『中村恵介クインテットin 上海』にもある様に、海外でも活躍するミュージシャンだ。そろそろ中堅の域に入って来る年頃かもしれない。彼らには確実なテクニック、ビート感、そして何よりも音楽に対する情熱がある。
さらにずっと若い現在22才の中島朱葉は、今後が楽しみだ。和歌山出身の彼女はボストンのバークリー音楽院で学んでいる。話をするとまだ表情にあどけなさが見られる中島だが、一旦サックスを持ったらその勢いは半端ではない。まだ荒削りなところもあるが、彼女自身、日本のジャズシーンをハードバップの分野から背負って立つ、と自覚しているという。何とも心強い。中島のパートナーとして活動する海堀弘太(p)は、素晴らしいテクニックを持つ22才。早稲田大学理工学部の学生とジャズを現在、両立させている様だ。
そんな中島、海堀を始めとして、若いミュージシャン達を早い時期からサポートしている大江陽象(ds)は「今、日本のジャズシーンはかつてない程若手のレベルが高いと言われている。中島とは関西のミュージシャンとの関わりの中から縁が生まれた。彼女が17才の頃から、ジャズを必死に身につけようとする姿勢が音に垣間見えていたので、初期の頃に彼女のライブをいくつか設定し、以後サポートし続けている。」と言う。大江のグループでハーモンも一緒に演奏したベースの高橋陸は19才。大江がホストを務めた笹塚『竹花』でのジャムセッションに集まった若手ミュージシャン達の勢いも非常に良かった。高校生の及川陽菜(as)、関東学院大学の学院生の吉田奈都実のトランペットはハーモンも真っ青の迫力があった。
現在活躍する若手達は、音楽学校で学び、しっかりとした技術を身につけている。戦後ジャズを日本に広めた先人達とは比較にならない程の環境にいる。海外留学もずっと簡単になった。しかし、彼らは技術一辺倒ということだけではない。ジャズという形態は彼らにとってはもはやクラシックになっているかもしれないが、自分達の自由で新しい解釈で演奏している。革新性やアカデミックな事がとかく求められがちなジャズ業界だが、新しい時代の新しい価値観で自由に表現する音楽は、どんな形でも新しくエキサイティングだ。
東京にはかなりの数のジャズクラブがあり、多くの新しい世代のミュージシャン達がホットな演奏を繰り広げている。このところ、ロックミュージシャン達のライブスポットもとても活気がある、と聞く。CDの売れ行きが悪く、誰でも簡単にインターネットから音楽を入手する時代である。そんな間接的な音楽の聴き方に、若い人達は欲求不満をつのらせ、また、ライブに足を運ぶ様になったのかもしれない。ジャズもやはり、耳で聴き、目で見て、体で感じるものだ。私も、もっともっとライブにもマメに足を運ばなくては・・・!
あっという間に過ぎた3週間。カンザス・シティからやって来た青年は、私にも課題を残した。(竹村洋子)
「マーク・トゥーリアン・セクステット」:マーク・トゥーリアン(b) 近藤和彦(as) 岡崎好朗(tp) 片山雄三(tb) 大村亘(ds) 加藤英介(p)
@ SOMEDAY新宿、 5月7日
「中島朱葉クインテット」:中島朱葉(as) 大塚義将(b) 海堀弘太(p) 木村 紘(ds)
@そるとぴーなつ、江古田、5月9日
「トリオG」のメンバーと: 菊池太光(p) 楠井五月(b-リーダー) 福井康志(ds)
@東中野THELONIOUS、 5月18日
「EKD Jazz Collective」: 中村恵介(tp) 馬場孝喜(g) 熊谷ヤスマサ(p) 金森もとい(b) 今泉総之輔(ds)
@そるとぴーなつ、江古田、5月19日
「alfie 35th anniversary day Live」 峰厚介(as) 増尾好秋(g) 山本剛(p) 鈴木良雄(b)村上寛(ds)
@ alfie六本木、5月20日
楠井五月(b) ハーモン・メハリ(tp) 菊池太光(p)
@Intro高田馬場、5月20日
小町通りのお土産屋で
大仏の前で
ランチに入った料理屋で、シェフが使う包丁に興味津々
海老の天麩羅を生まれて初めて頭から食す
築地市場で
築地で買った穴子をホテルで料理した、ハーモン特製穴子鮨
【関連記事】
ハーモン・メハリ・インタビュー
http://www.jazztokyo.com/interview/interview136.html
【関連サイト】
http://hermonmehari.jimdo.com
http://diversejazz.com
竹村 洋子 Yoko Takemura
美術学校卒業後、マーケティングの仕事に携わる。1996年より、NY、シカゴ、デトロイト、カンザス・シティを中心にアメリカのローカル・ジャズミュージシャン達と交流を深め、現在に至る。主として ミュージシャン間のコーディネーション、プロモーションを行う。Kansas City Jazz Ambassador 会員。KAWADE夢ムック『チャーリー・パーカー〜モダン・ジャズの創造主』(2014)に寄稿。
buh music BM001
Hermon Mehari (tp)
Ryan J. Lee (ds)
Ben Leifer (b)
Tony Tixier (p)
Logan Richardson (as)
Tim Braun (g-truck 9)
Anthony Saunders (synthesizers-truck 9)
1. Our Journey
2. Amor Fati
3. Jeudi a YJ's (#1)
4. Motherland
5. Forever
6. Leave An Age
7. Sam
8. Jeudi a YJ's (#2)
9. Full Circle
10. Tree Leaf Melody
11. Blanc
12. Barron's Blues
13. Jeudi a YJ's (#3)
14. Rest In Peace
Produced by Divers
Recorded in Videlles, France
Mixed and mastered in Kansas City, KS
on July 2012
ハーモン・メハリは5月に来日、3週間ほど滞在した際にアテンドされた竹村さんの紹介記事を読めば、彼の人となりはかなり輪郭が明快になるのではないかと思う。笹塚のジャズバー「竹花」でのギグだけではなく、その滞在中のあきれるほど旺盛な行動についてはそちらをご覧いただくとして、ここでは彼が加わっているユニット、Diverseによる2作目のアルバム『Our Journey』に触れてみよう。
彼がリーダーと謳っているわけではないが、収録されている全14曲中7曲が彼のオリジナルで、あとはベン・リーファー(b)が4曲、ライアン・J・リー(ds)が2曲、トニー・ティクシエール(p)が1曲と、すべてオリジナルで構成されているが、まあ中心的な存在であるのは間違いないのではないかと思う。ただ、トランペッターによくありがちな俺が俺がを感じさせることがないようで、このアルバムの彼のオリジナルでも各プレイヤーにバランスの取れたソロ配分を心がけているのがよく窺える。人格的にはバランスがよいと言えるのかもしれないが・・・。
演奏曲目についてはインタールード風の3、8、13以外は、11曲がテンポは殆どミディアムとミディアムスロー、もしくはスロー。そのうち1、2、4、5はモーダルなアプローチでちょっと懐かしい気分(いいのかな?)になる。他では9がゆるいエイトビートにのった結構キャッチーな曲に仕上がっている。
しかし全体の印象は少し地味かもしれない。あえて特定のリーダーを表に出さず、グループ・エクスプレッションとしてというように無理にそこに収斂させるのではなく、結果として優れた成果を出せればいいのではないかと、ふと思った。アルバムの評価としては厳しくなったが、ハーモンもさることながらピアノのトニー・ティクシエールも時代を突き抜けるようなポテンシャルを秘めているように思う。今後が楽しみな逸材たちが創り出す次のアルバムに期待しよう。
大江トリオ ジャムセッション
ホスト
大江陽象(ds) 小池純子(pf ) 高木遊馬(bs) 中島朱葉(as) ハーモン・メハリ(tp)
江澤茜(as) 及川陽菜(as) 岡田遥来(tp) 吉田奈都実(tp) 大谷桃(pf) 小林新作(bs) 岡井雄一郎(bs) C.J.キム(g) 鳴海望美(vo)
笹塚駅近くのジャズバー『竹花』で、カンザスで将来を嘱望されているトランペッター、ハーモン・メハリがプレイするという情報が入ってきたので早速駆けつけた。定刻の18:30までには、さほど広くないが、ほぼ客席は埋まった。その中にサックスやペットの楽器ケースを携えた女性が混じっていて目を惹いたが、この店恒例のジャムセッションに参加する目的のようだ。
ホストバンドのメンバーも揃い、ミディアムテンポでB,ゴルソンの「whisper not」から始まった。ステディーで快適なリズムをバックに美しいテーマを持つこの曲で、ハーモンはアドリブに入ると柔らかい音色で滑らかなメロディーを織り成しながら、豊かな彩を添えていった。やがて早いパッセージであまり温度感のないアルペジオへと進むが、それはいかにもクールで新しいと言えよう。
威勢のいい、とんがったプレイを期待していなかったとはいわないが、確かなテクニックに裏打ちされた醒めた熱狂というものの存在があることをふと思わされた。
そんな感懐に浸るまもなく、大ジャムセッション大会が始まった。女子学生(高校生もひとり)4人のホーンに、ベース2人。あとピアノ、ギター、ヴォーカルが加わった。もちろんホストバンドの面々も加わるので生存競争状態となった。出番を待っているときの彼女たちは控えめ、遠慮がちな「オホホ」なのだが、、いざソロとなると俄然自己主張の塊へと変身する。そう、意外、豪快、大胆、自己中心。そうだ!これでいいのだ!これもジャズの一断面なのだ。
と呟きながら延延続くジャムセッションに身を委ねたのであった。
ハーモン・メハリ(tp) C.J.キム( g) 高木遊馬(b) 大江陽象(ds)
中島朱葉(as)と
ホストを務めた大江陽象(ds)と
5月19日:JAZZ BAR TAKEHANA 竹花(笹塚)
関口登人 Nobuto Sekiguchi
1960年頃からジャズを聴き始める。1968年早大法学部卒 在学中はモダンジャズ研究会に所属。以後、あのころの感動を求めて、ン十年聴き続けているが、聴き続けるしかないのかもしれない。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.