及川公生のオーディオちょっといいものみつけた

Vol.33 |

Accuphase PRECISION STEREO PREAMPLIFIER C-3800
仕様の詳細:http://www.accuphase.co.jp/cat/c-3800.pdf 参考価格 1,785,000円(税込)

text by Kimio OIKAWA 及川公生

1972年創業のアキュフェーズは2012年に創業40周年を迎えるが、その記念モデルとして企画開発された製品である。精緻にして理想を掲げたアキュフェーズ社の製品群には、どの機種にも妥協のないオーディオの理想像として権威さえ感じるが、C-3800を眺めると、オーディオ機器の領域を超えたオーラを感じる。オーラは、芸術的に人物にも偶像にも感じ取る私だが、全く同様の稲妻が身体を走った。
アキュフェーズの製品には共通して「内部の美しさ」があリ、パーツ、ユニットの構成にインダストリアル・デザインの頂点を観る。C-3800には、その記念モデルとしての思いを込めた研磨の光を感じるのだ。内容の特長的な存在は音量調整の回路。AAVAと称せられる回路である。CPUを用いていると言えば、デジタル化かと早合点しまいそうだが、これはコントロール素子であって、実際はアナログである。その技術的優位性をさらに進化させ、2回路並行駆動と贅沢、理想、と記念モデルの象徴的な存在だ。
音が出た瞬間に、これは!と、のけぞる。サウンドステージが、全く違うのだ。
微少レベルの音の表情が全く違う。録音時の緊張の中では気づかない楽器の表情を感じ取った。

ピーター・ビーツ&ジャズ・オーケストラ・オブ・コンセルトヘボウ。
管楽器の炸裂する独特のサウンド造りは、ヨーロッパの音の好みが顕著に表れている録音であり、その炸裂、金属質の音の中に、フーッと空気を感じ取った。これは、全く、想像しなかった音場の再現だ。オンマイクの炸裂に耳は傾いていたが、どっこいライブ録音の音場を聴かせたのだ。マルチマイクの幾つかの積み重ねに、距離感を聴く事ができた。勿論、リバーブ処理も追加されるが、そのリバーブに質感の違いを発見。この発見が、一番の収穫だ。リバーブが造りだす臨場感に、減衰する音場感の自然さを感じ、ミックスで使用されたリバーブの品質の高さを確認した。

リバーブに隠れた実際の音場が、ここには鮮明に再現されている。これが、のけぞった理由だ。奥行き感の情報に敏感に反応し、それが、リアルな源を鮮やかに聞こえさせる効果になる。ベースの切れ味のいい表現に、これまで気づかなかった音を感じる。同じようにトロンボーンの中音域の豊かさにも、これまで聴き続けた音源なのに、感銘を感じる。音質的傾向にまで注意が走る事に、自分は錯覚か!と問うが、微少な音源の再現力が、これを導くと考えると納得がいく。ベースと同様だ。ジャズのヨーロッパ作品の演奏も録音手法も、根底にあるクラシック音楽を感じ取るのだ。
さらに聴き続けると、この録音に、ふと、スピーカーの外側にまで広がる臨場感の存在を知る。のけぞった、直感的な表現から、注意して聴く音質表現に変化の支柱を置くと、ふと、ワンポイント録音の事を思いだした。マルチマイクの極致を行く録音なのに、ワンポイントを感じる経験は無かったが、ここにはそれがあるのだ。収録時の仕掛けにワンポイント情報の位相差があった筈(はず)。凄い体験だ。

ここで、自分が関わった録音のCDを聴く。
『向井滋春/プレイズ・スタンダード』(A60JAZZ/GNCL-1160)。
トロンボーンの直接音に、やはり空気・空間を聴いた。トロンボーンの音の放射を直接音から聞き取ると、ちょっと身震いをする。情報量と簡単に言うことがあるが、ここで再現されているのは情報量の解析の結果だ。
もう一点、これまで繰り返し聴いた音源からの強烈な印象は、ドラムスのエッジの表現だ。硬質の3H鉛筆でシャープに書いた様な周辺を曖昧にしないシンバル、スネア、の音に新たな発見をする。シンバルのマイクは距離が異なる音源を拾っており、音像は曖昧だ。しかし全体像ながらドラムス群のシャープな音像は本音で驚きだ。 相棒のトランペット、アルトの音色に艶やかな彩りを聴きながら、表現力の周辺を飾る録音時のマイクの配置を思い出す。音のかぶりがジャズらしさと計算した仕掛けが、ここにはある。途方もない再現性の確かさを確認した。

試聴ディスク:

ブルース・フォー・ザ・デイト amazon

『ピーター・ビーツ&ジャズ・オーケストラ・オブ・コンセルトヘボウ/ブルース・フォー・ザ・デイト』
JOC Records/55 Records FNCJ ? 5539 ¥2, 500

CD試聴記:
http://www.jazztokyo.com/five/five664.html

向井滋春/ プレイズ・スタンダード amazon

『向井滋春/ プレイズ・スタンダード』
ジェネオン・エンタテインメント/A60JAZZ GNCL?1160 ¥2,940(税込)

CD試聴記:
http://www.jazztokyo.com/newdisc/473/mukai.html

及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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