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吉祥寺、カフェズミから帰ったばかりだ。福島恵一音盤レクチャーin Sound Cafe dzumi「耳の枠はずし」第1回(■http://miminowakuhazushi.dtiblog.com/blog-category-3.html)、じつに興味深い音源が次々と。おれはいかに偏った聴きかたをしているか自問する契機にもなり。あ、アンフォルメル、とは、どこの国の即興ユニットなのだ?と、激しい無知ぶりも反省だ。宮川淳を読まなければならない。


<track 020>
Tomoko Sauvage from 『ombrophilia』 (either/OAR) 2009

開演前に、予備知識がない状態で聴くことができたこのサウンドにはトロトロになった。どのように録音されたか、未確定の状態で耳をすます。第1回デレク・ベイリーと「音響」以降音盤プレイリストと題されたA4印刷物を手にし、1曲目は71年のベイリー「Guitar Solos vol.1」(incus)と書かれている。たゆたうサウンドの焦点が遠近している。遠近する運動が同時に複数のような気もするし、手がかりを得ようと耳をこらすとからだから耳が前後に飛び出すような奇妙な感覚にとらわれる。

アメリカの実験音楽レーベルand/OARのサブレーベルeither/OARからリリース、という事前説明も不純だわ。午前中に目黒八雲図書館に行く途中で聴いた「あなた方は倖いである、倖いラッキー、倖いラッキー」という町田康の声が後頭部でささやいている。



<track 021>
倖いラッキー / 町田康+THE GLORY from 『どうにかなる』 1995

パンクバンドINUの『メシ喰うな!』の「つるつるの壺」を聴いた81年から町田町蔵の音源を追っかけるが、町田康の名で『くっすん大黒』で小説家デビューするのが96年、その前の年の作品。フリクション黄金期のギター、恒松正敏が参加している。80年代の日本のパンク・シーンを聴いてたファンには夢の共演。町田康は00年に芥川賞を取って、それから町田不在のJロックの沈下が始まったと、おれはみる。ブランキー解散とも期を一にするか。知らなかった。布袋寅泰とバンドを組んでて、布袋から顔や上半身に2週間の怪我を負わされる事件もあったとは。組む相手が違うだろ、と、おれは言いたい。



<track 022>
Scorpion / Gato Libre from 『Shiro』 (Libre ボンバレコード) 2010

田村夏樹、藤井郷子、津村和彦、是安則克のガトー・リブレのCD『シロ』を夜勤同僚の鬼平犯科帳好きでジプシーキングスを聴くオーモリさんがなかなか返してくれない。ラストのタイトル曲がいいんだそうだ。おれは3曲目だな、チューニングがズレたようなギターとベースのつまびくイントロからしてハマる。藤井さんはピアノではなくアコーディオン。リーダーの田村さんはこのバンドのコンセプトは「淡々と盛り上がることもなく、切ない、かもしれない、メロディーをつむぐ」という。1月9日新宿ピットインでの4バンド一挙同日CD発売記念ライブ、来場特典のCDRで年末に放送されたトランス・ワールド・ミュージック・ウェイズの「郷子・夏樹のなんでもかんでも」で話していた。

田村さんと藤井さんはラリー・オクス(ロヴァ・サキソフォン・カルテット)のLarry Ochs Sax & Drumming Coreの一員としてツアー中、スペインの公演後ある客が「チケット代を返せ」とクレームを言い出し、その客がケーサツを呼ぶ事態となり、それがマドリッドの新聞に載り、英国のガーディアン紙でも議論になったという。どんな音楽なのだ、ラリー・オクス。むかし、「ロヴァの耳」というコラムを書いていたけど、その理由は原稿のしめきりのため横浜で来日公演をするロヴァサキソフォンカルテットを聴きに行けないのが哀しいという意味のタイトルにしようと、思いついたのだった、そういえば。

ガトー・リブレの音楽はフリージャズともインプロとも、そのモノサシからは聴こえてこない。フリーミュージックぎらいの家族をのせて渋滞ドライブのときにかけても、みんな楽しそうに「なにこれ?」「いいねー」とおとなしく聴いていたぞ。おー、ここにわたなべさんのレビューが(■http://www.dommune.com/ele-king/review/album/000346/)。



<track 023>
I Know Why the Caged Bird Sings / Carmen Lundy from 『Solamente - The Demo Project』 (Afrasia Prod. ) 2009 オーマガトキ

1月29日に渋谷メアリージェーンに寄ったらかかっていた。たのんだカフェオレをくちにつけようとしたら、バックのタイコ演奏が絶妙にズレているのが気持ちよくてこぼしてしまいそうになった。なんだこのヴォーカルとの絶妙な間合い。トンがっていることの何とカッコわるいことでしょうねと涼しく脱却している、とも言えるし、このタメの効いたグルーブ感。こ、これは・・・おそらくジョー・ヘンリーのCDみたいに優れたプロデューサーが狙っているのに相違ない・・・いったい誰だ?

カーメン・ランディというのは、カサンドラ・ウィルソンやダイアン・リーヴスと並ぶ現代屈指の実力派ジャズ・ヴォーカリスト、らしいんだが、そういうくくりではないとおいらは思うぞ。メアリーから帰って、さっそくアマゾンに注文、おー、さすが慧眼オーマガトキ・レーベル、国内盤になっている、すぐに届く、帯文句に「ハンドメイド・グルーヴィー・ミュージック」とある。・・・なんと、これはひとり多重録音、ベースもギターもハモンドオルガンも歌も、このズレた絶妙な1曲目のタイコも、ランディによるものだった。突出したテクを誇るタイコではない、というのは、そういうわけだし、彼女も出来上がってからこの奇跡を感知したのではないかな?、いずれにしてもなんともいいトラックを発見した。



<track 024>
Lips That Would Kiss / The Durutti Column (Factory Benelux FBN 2) 1980

インフォメーションがない(少ない)状態で音楽に出会う、ということの意味なり価値なり、考えさせられる。そういえば、日立サウンドブレイク、て、テレビ番組でかかっていたのでドゥルッティ・コラム、81年頃だった気がするぞ。これはテレビに向かってペンとメモを手にしてミュージシャン名をつづるのに必死になったな。いまみたいにググることもできないし、レコード屋のどこに行けばいいのかわからんかった。ロックでもないし、ジャズ喫茶でもかかりそうにないし、ゲンダイオンガクでもないし、アンビエントというジャンルもその頃知らないし。まー、おいらの心のなかの歴代ナンバーワン・ギタリストが鶴岡雅義、リッチー・ブラックモア、ブライアン・メイの次にあたるギタリスト、ヴィニー・ライリーとの出会いであった。タウナーにもメセニーにもベイリーにもシールズにもまだ出会っていない。

いま聴くと、かわいいな(■http://www.youtube.com/watch?v=z--mcTEWXvA)。

ユーチューブの音が良くない、というのは音楽業界にとって倖いである、倖いラッキーである。ただで宣伝してくれるのである。アイチューンでダウンロードした音質は持ち歩きやカーステが用途である。その音質の薄さは音楽業界にとって倖いである。



<track 025>
The Plum Blossom / Yusef Lateef from 『Eastern Sounds』 (Prestige) 1961

DJにも人気盤だということなんだが。ユセフ・ラティーフの演奏は渋谷メアリージェーンで店主の福島哲雄師がよくかけていた記憶がある。

お!いまの店主はミュージックマガジンのジャズ担当松尾史朗さんなのかー(■http://e-days.cc/features/tokyo/spot/shibuya/dining/dining02.php)。マガジンのディスク採点をみるとざっと見、オール7か6、まれに8、という、なかなかの苦界に身を沈めているように読んでいた、けど、お店の選曲は本気じるしなのだな。

ユセフ・ラティーフのイースタン・サウンズは聴いたことがなかった。札幌のタワレコでバーゲン箱からジャケ買い、999えん。夜中の西川口駅前で路駐してコンビニおにぎりをほおばって休憩しながら聴いた。つまびくベース、カチャカチャ鳴らすパーカス、低音のゆるいフルート、はねる美しいピアノ、こ、これはジャレットのアメリカン・カルテットの一側面の幻惑サウンドではないか!陶酔するだに。このピアノはジャレットじゃねえか、むかしのおれなら聴きわけがつかねえぞ、はやくジャレット好きの友だちに知らせなければ。

2曲目はオーボエ、3曲目はサックス、と、しかも曲想がいろいろとなんとも器用、それでいてどれも堂に入った面妖な。ピアノはバリー・ハリス。あのう、バリー・ハリス、いいですねえ・・・、いままでぜんぜん気にしたことなかった!今日もまたちゃんとしたジャズファンになろう、と、午前2時15分の西川口駅前で夜空を見上げるおいらなのだった。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

JAZZ TOKYO
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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