Vol.5 ノルウェーの夏
text & photos by Ayumi TANAKA

 ノルウェーの短い夏が終わろうとしている。春に新しく緑をつけた木々も、少しずつ葉を落とし始めた。夏の間は日照時間がとても長い日が続いた。私の暮らすオスロでは、最も長い時は日付が変わる頃にやっと日が落ち、午前3時過ぎには日が昇る。朝から晩まで、あちこちで鳥たちが美しい声で鳴いていた。天気のいい日には、公園や湖、森などに出て、夏の太陽を楽しむ人々の姿が多く見られた。人々がとても明るく素敵な表情をしていたのが印象的であった。ノルウェーで暮らす人々にとって、明るい太陽が照る夏は、これから迎える長い冬を乗り越える上で、とても大切な季節のようだ。

 夏の間、ノルウェーでは各地で様々なジャズフェスティバルが行われた。Kongsberg Jazzfestival(http://www.kongsberg-jazzfestival.no/)、Molde Jazzfestival(http://www.moldejazz.no/)、Nattjazz(http://nattjazz.no/)、Oslo Jazzfestival(http://www.oslojazz.no/)、Vossa Jazz(http://vossajazz.no/)をはじめ多数あり、ノルウェーや海外から多くのミュージシャンが参加した。ノルウェーからは、Atomic、Arild Andersen、Arve Henriksen、Bugge Wesseltoft、Elephant9、Eple Trio、Farmers Market、Hakon Kornstad、Jon Balke、Mats Eilertsen、Nils Okland、Per Jorgensen、Susanna Wallumrod、The thing、The Deciders、Tord Gustavsen、Tore Brunborg、Trondheim Jazz okester等が参加し、海外からは、Antony and the Johnsons、Brian Blade、Cassandra Wilson、 Esperanza Spalding、Evan Parker、Kurt Elling、John Taylor、Marcin Wasilewski、Marilyn Mazur、Nikk Bartsch Ronin、Norah Jones、Stefano Bollani、The Bad Plus、Tony Bennett、Wayne Shorter等、ここには書ききれないが、様々なミュージシャンが集った。ひとつの国で、ひと夏にこの様に多くのミュージシャン達が集うジャズ・フェスティバルが行われる国は、世界中見渡してもそう多くないのではないだろうか。大きな街のみではなく、小さな街でも行われているのもひとつの魅力だ。どのジャズ・フェスティバルも若い人からお年寄りまで、多くの聴衆で賑わうそうだ。子供達も参加できるワークショップや、無料のコンサートなどもあり気軽に足を運びやすい。ジャズなどの音楽が人々の暮らしの中でとても親しみやすい所にあり、どんな人でも気軽にフェスティバルを楽しめる環境がノルウェーのとても良い所だ。

 また、ジャズ・フェスティバル中、Jazzintro というノルウェーの若いミュージシャンを発掘するためのコンペティションも行われた。これはノルウェーで2年毎に行われるもので、優勝バンドは2年間で150,000クローネ(約200万円)相当のサポートを受けられる。そのサポートで、ツアー、レコーディングなどを行うことができる。今年は8バンド参加しノルウェー国立音楽大学の4年生のバンド Mopti が優勝した。これまで過去に優勝したバンドに、同校の卒業生の In The Country (http://inthecountry.no/) や Albatosh (http://albatroshduo.wordpress.com/) などがいる。
 ノルウェーには JazzIntro の他にも若いミュージシャンをサポートするイベントが多数あり、こういったサポートが、ノルウェーのこれからのミュージシャンを支え、ノルウェーの音楽をより豊かにしている。
 また、ノルウェーの若いミュージシャンのためのサポートは、大学でも行われている。ノルウェー国立音楽大学のジャズ科では、4年生になると自分のやりたいプロジェクト(例えばレコーディングや、ツアー、コンサート等)を学校(国)から補助金を受けて行うことができる。また、大学院では、2年間を通して学校(国)から必要資金を受けて、自分のやりたいプロジェクトを行うシステムが用いられている。その資金で希望するレッスンを受けたりツアーやコンサートを行うことができる。これらは若い才能あるミュージシャンが自分のやりたいことや学びたいことを実現するのに、とても素晴らしい環境である。

 これから秋になり、私にとって二年目のノルウェーでの暮らしが始まる。この連載エッセイのタイトルにあるように、オスロの人々や自然、街などから様々なことを学び、音楽や人と誠実に向き合える日々を過ごしたい。学校では9月から新学期が始まり、新入生が入学してくる。彼らに会えるのをとても楽しみにしている。







田中鮎美:
3歳から高校卒業までエレクトーンを学ぶ。エレクトーンコンクール優勝、海外でのコンサートなどに出演し世界各国の人々と音楽を通じて交流できる喜びを体感する。
その後、ピアノに転向。ジャズや即興音楽を学ぶうちに北欧の音楽に強く興味を持つようになり、2011年8月よりノルウェーのオスロにあるノルウェー国立音楽大学(Norwegian Academy of Music)のjazz improvisation科にて学ぶ。Misha Alperinに師事し、彼の深い音楽性に大きな影響を受ける。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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