# このCD2011国内編#05
『渋谷毅・川端民生/蝶々在中』
text by 望月由美
(株)林泉 CARCO‐0014 2,500円 |
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渋谷毅 (p)
川端民生(b)
1. 蝶々(てふてふ)(渋谷毅)
2. が、とまった(渋谷毅)
3. There Will Be Another You(Harry Warren)
4. You Don’t Know What Love Is(Gene De Paul)
5. Lover Man(Roger “Ramz” Ramirez、Jimmy Sherman)
6. Body And Soul(Johnny Green)
7. Misterioso(Thelonious Monk)
8. You Don’t Know What Love Is(Gene De Paul)
9. 無題(渋谷毅)
録音:
1-5 1998.10.28 @中ノ峠ミュージック・ラボ
6-9 1998.10.31 @小松市民センター
エンジニア: 柴田徹
マスタリング:島田正明
プロデューサー:渋谷毅
いつまでもひっそりと、しかし強い存在感を漂わせ精彩を放ち続ける作品
いまや伝説のベーシストとなった川端民生(b)と渋谷毅(p)二人の貴重なデュオ音源の初CD化である。
13年前の録音であるが、二人の語る音楽には時を経て起こる経年劣化というものが全く感じられず、新鮮な驚きと感動を与えてくれるので、あえてこの一枚に選ばせていただいた。前半の(1)〜(5)まではスタジオでの録音で(6)〜(9)がその3日後のコンサート録音であり、スタジオとライヴ の両面から二人の究極のデュオが世に出たことは衝撃的とさえ思える快挙である。淡々として飾り気のない、しかし奥深い渋谷毅のピアノに川端民生が艶やかなビートで応える。弦を撫でるようにひくベースが多い中、川端民生は弦をしっかりとはじいている。弦のきしみが凄みを倍加する。そして川端民生の音には慈愛が満ちている。二人は普段着のままで、気の向くままに対話をし、時間を共有しているように聴こえる。しかし聴けば聴くほどに二人の間合い、温かみが伝わってきて思わず心が和む。
渋谷毅は人との係わり合いを大切にする人である。絆などという仰々しい感じではなく、さり気なくもっと自然に人の気持ちを大切にする人なのである。音楽の世界に限らず、波長の合う人を瞬間に感じ取り交流を深めることを生来備えているのかも知れない。だから一度しっくりきた相手とは永く共演することになる。今回の共演相手、川端民生(b)とも1977年の『COOK NOTE』(TRIO)以来、川端民生が53歳という若さで亡くなるまで続いた。渋谷さんはご自身のブログで川端民生について、「ベースはもちろんのことだけれど、人間がすばらしく、川端さんがいなければぼくの人生もなかったようなものだ」と語っている。二人の親密な心の通い合いがこのひとことの中に顕れているように思う。二人の関係は2000年の7月、川端民生の死によって閉ざされたが、残された本作『蝶々在中』はいつまでもひっそりと、しかし強い存在感を漂わせ精彩を放ち続ける作品である。(2011年12月 望月由美)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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