長身で細身のシュタットフェルトが低目のピアノ椅子に座って演奏する姿は独特の雰囲気を醸し出している。初来日は２００５年でＪ.Ｓ.バッハの｢ゴルトベルク変奏曲｣の演奏は衝撃的だった。それから１０年後の今回は「Ｊ.Ｓ.バッハへのオマージュ」と題して再びオールＪ.Ｓ.バッハ作品を演奏。初来日時は２５歳、今年３５歳で幅広いレパートリーに挑みながらもバッハ作品を探究してきた。今回の全演奏７曲中５曲がシュタットフェルト自身によるピアノ用編曲である。その中にはコラール前奏曲｢暁の星のいと美しきかな｣、オルガン曲で有名な「トッカータとフーガ」をはじめ、「カプリッチョ」全６曲、無伴奏ヴァイオリン曲の「シャコンヌ」、オルガン曲の「パッサカリア」がある。
マルティン・シュタットフェルトは１９８０年コブレンツに生まれる。２００２年ライプチッヒのバッハ国際コンクールで東西統一後の初のドイツ人ピアニストとして、また最年少で優勝する。コンクールの２年後にソニー・クラシカルでＪ.Ｓ.バッハの｢ゴルトベルク変奏曲｣を録音する。これがグレン・グールドの名盤と比較されグールドの再来と言われた。初来日ではこの｢ゴルトベルク変奏曲｣の演奏で話題になった。ミュンヘン・フィル、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管、チェコ・フィル、ザルツブルク・モーツァルテウム管ほか多数のオーケストラと共演、またザルツブルク音楽祭、ロッケンハウス音楽祭、メニューイン音楽祭ほかに定期的に参加している。また最近では青少年のための音楽活動も盛んで、学校訪問で若い世代と交流、ピアニストとして音楽観を共有している。この日も区の主催だからかも知れないが、中高生の若い世代の聴衆が目立ったのが印象的だった。

　 　

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