#  このCD2011国内編#08

『青木十良(チェロ)/バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番』
text by 丘山万里子


N&F Co.,Ldt.Tokyo
NF20303 ¥2600

演奏:
Violoncello /青木十良 Pf/竹尾(鳥井)玲子、水野紀子
曲目:
J.S.バッハ「無伴奏組曲第4番 変ホ長調 BWV1010」/「ミュゼット」(ガヴォット〜イギリス組曲第6番 ニ短調よりBWV811
ショパン「チェロ・ソナタ」より第1楽章

録音:
無伴奏組曲第4番 変ホ長調 BWV1010/所沢市民文化センターミューズアークホール(埼玉)2009年4月22〜24日
ミュゼット/SPより復刻、1955年
ショパン/浜離宮朝日ホール2006年6月6日 ライブ
プロデューサー:
西脇義訓
バランス・エンジニア&サラウンド・サウンド・テクノロジース:
福井末憲

一貫して変わらないのは、滑らかで決して雑音の入らないボウイングの妙

 エレガントという言葉はこの人のためにある。今年7月で96歳を迎えた現役のチェリスト。今回のバッハの「無伴奏第4番」と令嬢とのショパンの間に挟まれている「ミュゼット」は半世紀ほども離れた演奏だが、一貫して変わらないのは、滑らかで決して雑音の入らないボウイングの妙である。アメリカの演出過多で、雑音さえ効果とする演奏は、音楽に鋭い表情や強烈なインパクトを生んで聴き手を説得するが、そうした演出とは真逆を行く。
 「ミュゼット」を聴くと、年齢を重ねるうちに枯淡の境地に入ったという訳ではなく、当初からそういう流儀であったことが知られる。
 ほぼ独学でチェロを学び、戦後は次々と新作初演を引き受けた氏の音楽は、どんな時も効果を狙わず、流麗である。かすれない、騒がない、叫ばない。それがどの作品にもエレガンスを香らせる。弓と弦の間のわずかな空隙が美しい共鳴を生むと言ったらよいか。
 氏の両手は柔らかく、分厚い。これで弦を押さえるのか、と思うほどに。そしてしなやかな弓の往来。アップもダウンも自然な流れのままに行き来する。
 氏の指導は、斎藤秀雄の教え方とは対極に立つ。幼い弟子には10分の練習で良いと言う。集中力が続かないからだ。そうして、徐々に樽のタガを締めるように、育ててゆく。
 今日も氏を慕って、若い弟子たちが集まる。彼らに何よりボウイングを教えたい、というのは、音楽の基礎たるボウイングこそが音楽を成り立たせる、という事だろう。
 このディスクには、そうした氏の音楽のありようが詰まっている。(丘山万里子)

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