母国の有名なポピュラー音楽作曲家の作品を、見事なジャズ作品に仕上げた

　嬉しいことに今年はラテン・ジャズの当たり年だったようで、
素晴しいアルバムがいくつもあったが、その中でベストの１作として現代屈指のアルト奏者、ミゲル・ゼノンの『Alma Adentro』（Marsalis Music）を挙げてみた。彼の才能はブランフォード・マルサリスが非常に高く評価し、自身のレーベルにも迎え入れているのだが、残念なことに邦盤は出されていない。母国プエルトリコのリズム、プレーナを基調とした前作『Esta Plena』(Ｍ・Ｍ)も素晴しい出来栄えだったが、この新作は母国の有名なポピュラー音楽作曲家の作品を、見事なジャズ作品に仕上げたもので、この２作がもし邦盤で紹介されていたならば、日本での彼への評価もグーンと高まったはずと大変残念に思っている。今注目のバンド・リーダー＆アレンジャーのギレルモ・クレインの率いる管アンサンブル（編曲もクレイン自身）をバックに、ゼノンが故郷のサウダージ感溢れる美メロディーの数々を、力強く朗々と切々と歌い上げる。その唄い口がなんとも素晴しい。そしてルイス・ペルドモ（p）ヘンリー・コー（ds）といった、現在のＮＹを代表する俊英が揃った、不動のユニットの面々が、その唄を熱烈に盛り立てる。この感触、応えられません。このアルバムと並んでもう１枚、現代キューバ・ジャズを象徴するフルート奏者、マラカのライブ・アルバム『Reencuentros』も中身、面子ともに凄い。とくにキューバを代表する若手ピアニスト、ハロルド・ロペス・ヌッサに注目して欲しいし、我等が美人ヴァイオリン奏者、ＳＡＹＡＫＡも参加しているんです。
この２枚でラテン・ジャズへの認識を深めてもらえればサイコウ！（小西啓一）