#  このCD2011海外編#09

『Farmers By Nature/out of this world’s distortions』
text by 多田雅範


AUM Fidelity 067

Gerald Cleaver ds
William Parker b
Craig Taborn p

1.For Fred Anderson
2.Tait’s Traced Traits
3.Out Of This World’s Distortions Grow Aspens
...and Other Beautiful Things
4.Sir Snacktray Speaks
5.Cutting’s Gait
6.Mud, Mapped
+ AUM Direct Download Only Bonus Track
7.Start Now

現代の最高峰が顔を合わせたセッション

家政婦のミタ、見た?視聴率絶好調、主題歌「やさしくなりたい」、耳ん中リピート、ギターのキンキラアレンジが秀逸、を、歌う斉藤和義、原発を批判したセルフ替え歌「ずっとウソだった」、痛快だったな、城南信用金庫は原発縁切りを宣言してるし、α線核種?ってなんだ、ほんとかよ放射能防御プロジェクト(http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/dce6faeabbe3913408299051366c4b66)、

・・・ベラルーシで、チェルノブイリの被害者の治療に当たっている、現地の専門家は、「日本の皆さんには、申し訳ないけれども、チェルノブイリのときには、γ線核種がほとんどで、それでもいろんなことが起きましたが、それを超えるα線核種がかなり広範囲に広がっている以上、東日本のかなりのエリアは住むことは、難しい」と話しています・・・

来年の年末に2012年現代ジャズを振り返られたらいいよな、みんな。

という前書きで始めよう。2011年の現代ジャズ。

今年もニューヨークジャズの聖地ヴィレッジ・ヴァンガードの年越しはバット・プラスかあ、どうも大味でお子様向けな気がするがビートの新風は容認できる。で、年が明けると、ブラッド・メルドー、クリス・ポッター、フレッド・ハーシュ、マーク・ターナー、カート・ローゼンウィンケルが、それぞれ自己のユニットで三役揃い踏みをしているという2012年が見える。

現代ジャズの動向は、まずタイショウン・ソーレイが、マルサリス、スレッギルに対抗する自己のユニットをどんと出してきたこと。次に、サックスは王者マーク・ターナー、対抗クリス・ポッター、トニー・マラビーという地勢図を、ぐぐっとクラリネットとサックスで全面改訂しそうなサウンドを奏でるクリス・スピードが台頭してきたこと。ピアノではクレイグ・テイボーンが「ピアノ・ソロの革命がまたもECMから」と言うべき作品を問うたこと。この三人が今年の顔にふさわしいだろう。

このクレイグ・テイボーンのピアノ・ソロ『Avenging Angel』(ECM)、完全ピアノソロが可能だったとは、と唸ったおれなので本作を年間ベストに挙げようと考えていたが、このテイボーンと、魔王ウイリアム・パーカー、新兵器ジェラルド・クリーヴァーとのファーマーズ・ネイチャー(Farmers By Nature)名義の忘れ難い『out of this world’s distortions』(AUM Fidelity 067)を掲げることにしたい。まさに現代の最高峰が顔を合わせたセッションだ。ウイリアム・パーカーのベースについては、かつて小杉武久が形容した「惑星のような存在感」を引用して、そうそう!と言いつけるしかないでいるままだ。この盤については音楽批評・福島恵一のレビュー「世界の歪みから生えるポプラの樹」(http://miminowakuhazushi.dtiblog.com/blog-date-20110810.html)の動かし難い記述を・・・、

・・・福島兄についてはこないだジャズ評論家後藤雅洋師も世代最強の批評家だと認めておられたし、虹釜太郎さんも「福島恵一さんの単著を読む中学生の未来」(http://d.hatena.ne.jp/toxicdragon/20100507)と。わたしも、2001年アウトゼア誌8号に寄稿いただいたイタリアのジャズ、インプロ、現代音楽シーンを駆け巡った論考「長靴の中の小石-伊太利國辺縁音楽紀行」、これはそのまま英語やイタリア語に翻訳して海外で評価されたほうが早いかもしれないな、21世紀のリスナーに読んでもらおうと復刻しますね。・・・

1曲目の「For Fred Anderson」で交わされる、深い追悼の感情と希望を漂わせる静かで耳が楽器と楽器のあいだに粒子になって佇んでしまうような聴取に動けなくなる8分31秒間。

月光茶房で待ち合わせ。ポール・モチアン追悼でおれはCharlie Hadenの『Closeness』をかけてもらった。ベースとパーカッションと戦闘とか演説のサウンドコラージュ。曲題「この世界の歪みからポプラの樹やほかの美しいものが生まれてくる」(福島恵一)、ほんと、そうであってほしいよなあ、ちょこちょこと関東平野揺れてんなあ、その、α線核種ってどうなのよ、ゴー・ウエスト!なんて言ってるバヤイではない、

うわー、妹からのメールで末期がんのおふくろが入院して痛み止めの麻薬漬けになったという、ちゃんとスカイツリーを見せてやりてえんだよ、あー、でもなあ、おいおふくろ、死んじまったらおれの肩のところにしばらく居ろ、そしたらあれだぜ、すげーコンサートとかCDとかおれのカンドーが伝わってたまんねえぜ、この世のものとは思えない、なんて、そりゃあそうだ、なんてよ。(多田雅範=Niseko-Rossy Pie Pikoe)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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