#  ことしのこのライブ/このコンサート2011(海外編)#01

『Andre Mehmari/Gabriele Mirabassi デュオ・コンサート』
text by 伏谷佳代
2011年10月21日(金) @東京・三軒茶屋サロン・テッセラ


≪出演≫
Andre Mehmari(アンドレ・メマーリ/pf)
Gabriele Mirabassi(ガブリエーレ・ミラバッシ/cl)

ブラジルのサンパウロ出身のピアニストにしてマルチ・インストゥルメンタリストのアンドレ・メマーリと、イタリア・ペルージャ出身のクラリネット奏者ガブリエーレ・ミラバッシによるデュオが実現した(ガブリエーレの弟は、日本にも度々来日しているピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシである)。

その国家の成り立ちからして混血を奨励したブラジル出身という事実を差し引いても、メマーリの音楽にはボッサ・ジャズ・クラシック・ポップスなどあらゆる要素がるつぼと化しており、天賦の才能と楽器を知り尽くした一握りの者だけが到達できる、全方位的な音楽が奏でられる。ニュアンスの豊富さ、アンドロジーナス的な響きの揺らぎ、無駄の全くない力配分の打鍵など、ジャンルを抜きに第一級のピアニストである。

阿吽の呼吸でムーヴメント豊かなデュオを成したミラバッシも、極めて個性的なアーティストだ。楽器は自らの身体と見事に一体化しており、ユニーク極まりない身体の動きも「紛うことなきミラバッシの音」へ至る必要要素として組み込まれている。いかにもイタリア人ぽいステージングのひとつ-----などという言葉を跳ね返すほどの、ストイックに突きつめた奏法としての充実が音に漲る。

2010年にEGEAから発売された『Miramari』に収録されている曲がほとんどであったが、それこそ大海原を見渡すような見通しの良さ、立ち昇るように寄せてくる香気、肉体から発せられる温もり、など様々な感覚が刺激されては解き放たれる。会場の天上の高さや音響も最大限に音楽に活用されており、殊にミラバッシにおいては通常の奏法からタッピング音までを平等なラインに並べる効果を生んでいた。

こうした異種混淆の果てにひとつの大輪の花が咲いたような音楽を前に、ブラジル音楽とかイタリア・ジャズとかいう区分けはいかにも陳腐である。アーティストの日本語表記の問題も含め、小さな企画ながら切迫した問題を投げかけたデュオでもあった(*文中敬称略)。
(伏谷佳代 Kayo Fushiya)

【関連リンク】
http://www.andremehmari.com.br/
http://www.myspace.com/gabrielemirabassi

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.