# このCD2012国内編#01
『Jazz非常階段 featuring 坂田明/Made in Studio』
text by 伏谷佳代
doubt music Dmf-147 |
JOJO広重(g)
美川俊治(electronics)
コサカイフミオ(electronics)
JUNKO (voice)
岡野太(ds)
+
坂田明(as,cl)
1. NJQ
2. Copper Median Co.
3. Uroboros in a Klein Bottle
4. auto-noda-fe
*特典盤のみボーナス・トラック2曲収録
録音:2012年7月28日@GOK SOUND
録音/ミキシング/マスタリング:近藤祥昭
ライナーノーツ:野間易通/沼田順
ノイズ界隈に詳しくもないのに甚だ僭越だが、ジャズがらみの媒体が今年のベストを選ぶとき、このアルバムは外すわけにはいかないだろう。外したら逃げのような気さえする。ひと言、凄い。ノイズはまさしく戦いである。JOJO広重率いる伝説のノイズ・バンド『非常階段』が、巡りにめぐってジャズ界のドンであり世界有数のサックス奏者である坂田明と邂逅を果たした。JOJO広重がこれをやるのに「30年かかった」といい、坂田明が「40年かかった」というその音楽は、瞬間の切り刻みと覚醒の驚異的な持続である。感動的なほどフォームというものは何もないにも関わらず、すべての音がぶつかり合い戦い抜き、四の五の言わせないタイトさで攻め寄せる。しかし音の強圧強打乱舞はその実、無秩序からほど遠い。ソロとしても途轍もない高精度の集合体なのだ。聴きながらの肉体反応は矛盾状態の極み、耳をつんざかれつつ感動し、泣きながら笑い、脳裏は覚醒しながら沸騰している感じだ。まさに「音楽に理屈はいらない」の実況盤(ジャズ耳、とかいう不思議な単語もある日本だが)。みっしりとした質感、皮膚を泡立たせつづけるようなハイブリッドな録音も素晴らしい。同時発売された2012年4月のピットインライヴ盤『Made in Japan』(dmf-146)と併せての金字塔(こちらのライヴではドラムに豊住芳三郎が参加)。とにかく聴くべし、の2枚。
追記;今年は時間的にも金銭的にも関心的にも都合がつかず、ジャズ/インプロ界隈のライヴにはほとんど行っておらず比較ができないので「2012年このライヴ」の選出は辞退したが、9月23日のアルバム発売記念『JAZZ非ライヴ』には万難を排して出かけた。この日は岡野太と豊住芳三郎のツイン・ドラムという豪華なものだった。豊住の骨の髄に浸みる寡黙な決めの一打と、大阪が生んだ天才ドラマー・岡野太の最速に細分化される留まるところを知らぬビートの応酬は鳥肌モノだった。当初、ノイズ系とジャズ系に明らかに二分されていたように見えた観客も、ライヴが進むにつれて興奮のるつぼと化して一丸に。終演後の坂田明の喜怒哀楽すべてを同時に宿した表情も神々しかった。興奮のあまりその日は眠れず(*文中敬称略/伏谷佳代 Kayo Fushiya)。
【関連リンク】
http://www.doubtmusic.com/mart/new.html
*こちらで販促映像も見ることができる
http://www.kb-p.co.jp/publication/10_09_hijyou.html
*野間易通による「非常階段」のドキュメント本
http://www.akira-sakata.com/
http://noise.livedoor.biz/
http://www.kt.rim.or.jp/~jojo_h/ar/p_top/
http://www.yo.rim.or.jp/~t_okuno/godspeed/top.html
http://www.geocities.jp/sabu_toyozumi/
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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