#  このCD2012国内編#04

『林栄一/ガトス・ミーティング』
text by 望月由美


STUDIO WEE SW505 2,982円

林栄一(as)
吉田隆一(bs, fl, MC)
ネパール(tp)
後藤篤(tb)
斉藤" 社長" 良一(g)
岩見継吾(b)
オノアキ(el-b)
磯部潤(dr)
池澤龍作(dr)

1. 森の人
2. スモーキー・ゴッド II
3. ナーダム
4. ガトス・ミーティング
5. 睡眠と目覚めの間で/イエロー・ジャック
6. 回想
7. インサイド・オブ・ジ・アース
8. 夜と友達
9. OM

録音:2012年5月21日、西荻窪「アケタの店」にてライヴ収録
エンジニア: 島田正明
プロデューサー:林栄一&脇谷浩昭

 林栄一がいま最も力を入れているニュー・グループ「ガトス・ミーティング」のファースト・アルバムである。本作は12月にリリースされたばかりの最新作でCDレヴューにも未だ載っていないが一聴して「この一枚」に推挙させていただこうと心に決めた。とにかく熱い、湯気が沸き立っているのだ。4管プラス5リズムという9人編成であり、全曲すべてが林栄一のオリジナル。ライヴということもあるが、これほど9人全員が一心不乱、まっしぐらに林栄一の世界にひたりきるという情況は、近頃は滅多にお目にかかれない。
 「ガトス・ミーティング」は、もともとは猫好き同士の吉田隆一(bs)と3年前につくった4人編成のグループだったが、ライヴ・ハウスを中心に活動を続ける間に我も我もと志願者が増え、いまでは林、吉田のほかにトランペット、トロンボーン、ギター、ツイン・ベースにツイン・ドラムと9人編成にふくらんだ。このバンド、ライヴでは専ら林の作曲したオリジナルを林のアレンジで演奏することになっているが本作もすべて林のオリジナルである。ソロからデュオ、トリオ、カルテットそしてオーケストラまで請われればなんでも易々とこなす林栄一の究極の姿はソロ・パフォーマンスであるとばかり思っていたが、この「ガトス・ミーティング」ではブラスとリズムの相乗効果により、ソロ以上に林栄一のイメージ、林像を浮かび上がらせることに成功している。
 エスタブリッシュされた名グループにたとえてみれば「ガトス・ミーティング」にはコルトレーンのアフリカ・ブラスの大きなうねりとリズム付きのワールド・サキソフォン・カルテットのような勢いがあり、発散された音のかたまりには広々としたスケール感と洪水のような激しいリズムが渾然となって充満する。
 林、吉田をのぞいて若いミュージシャンが集まっているので技巧をこえたところでの気合がグループの売りである。この溌剌としたエネルギーをうまく引き出した林栄一のリーダーシップも見事で、作曲、編曲、指揮そしてアルトと林栄一の全てが「ガトス・ミーティング」に凝縮されている。全員がただ一点、林栄一にヴェクトルを合わせてこれ程までに無心に熱中して音を連ねる、というところにジャズの原点を感じ「2012年この一枚」とさせていただいた。(2012年12月 望月由美 Yumi Mochizuki)

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