# このCD2012海外編#03
『Penguin Café Orchestra/Signs of Life』
text by 本郷 泉
EG Records EGED 50 |
Penguin Café Orchestra
1. Bean Fields
2. Southern Jukebox
3. Horns of the Bull
4. Oscar Tango
5. The Snake and the Lotus (the Pond)
6. Rosasolis
7. Dirt
8. Sketch
9. Perpetuum Mobile
10. Swing the Cat
11. Wildlife
1973年結成、リーダー、故サイモン・ジェフス率いるグループ(1997年リーダー没後活動休止)の1987年リリースの由緒あるアルバム。25年後の今年、私の中でこの『Signs of Life』は間違いなく、そして改めて大きな輝きを放った一枚だった。正確にいえば、先日の、サイモン・ジェフス氏の実子息が結成した新生Penguin Cafeの来日公演が引き金となり、新旧グループのすべてのアルバムをそれぞれよく聴いたし、すべてのアルバムがわたし的「今年のアルバム」だったといえる。
とりわけ、先の公演で旧盤からのうち多く演奏され、印象深かったのが、『Signs of Life』からのナンバーだったし、わたしが初めて出会ったPenguin Cafe Orchestraの曲もこのアルバム収録曲だったから、よく聴いた中で一枚選ぶとしたらやはりこのアルバムだと思っている。
ライナーによると、リーダーの故サイモン・ジェフス氏は、少年時代から、主にクラシック音楽を専門に学ぶ環境の中で育った。音楽大学在学中に、クラシック音楽以外のジャンルに関心を持ち、参加したグループでの活動を通して、現代音楽や民俗音楽などにも関心を広げ、色々なジャンルの音楽との出会いがその後の音楽活動にも深く影響したとされる。
1973年Penguin Café Orchestra結成、1976年ブライアン・イーノ主催のオブスキュア・レーベルよりファースト・アルバムをリリース。この『Sings of Life』はグループの4作目。
ハワイアンのそれとは全く違うウクレレの演奏が印象的な、1曲目Bean Fieldsはカントリー風の楽しいオープニング・ナンバー。2曲目Southern Jukebox Music は、初夏の海辺の夕暮れの静かなひと時、的な風景を想起させる美しい曲。3曲目Horns of the Bull、5曲目The Snake and the Lotus(The Pond)、8曲目Sketchはリーダー、サイモン・ジェフス氏がひとりで多重録音した曲。5曲目のベース・ギターは、音色や曲の雰囲気がマリの伝統弦楽器ンゴニの音によく似ていて、もしかしたらこの曲の作曲をしたサイモン・ジェフス氏は、当時すでにンゴニを知っていて、意識してこの曲を作ったのだったりして、というのはわたしの勝手な想像。ゆるやかなピアノとバイオリンの陰影を含んだメロディがタイトルにもなっているタンゴのイメージの4曲目Oscar Tango。7曲目Dirt、ティン・ホイッスルが印象的なカントリー風の作品。9曲目Perpetuum Mobile、PCO的室内楽。10曲目Swing the Cat、スピード感あるバイオリン、チェロ、クアトロにカリンバがチリンチリンと控えめな良い音で入ってくるPCOらしい1曲。ラストは、凛とした緊張感をたたえた静寂をトライアングルで表現。残響がじんわり身体にしみわたってくる心地よさを、静かに味わってみたい。
PCOは結成当時から、バイオリン、チェロ、ピアノなどをメインの楽器に据えながら、クラシック一辺倒ではない新しい音楽の創作を模索してきたが、この『Sings of Life』でもウクレレ、クアトロ、カリンバ、ティン・ホイッスルなどの“非西欧”的楽器が、彼らの音楽哲学の実践に大切な役割を果たしている。それぞれの楽器はサイモン・ジェフスの音楽的美学に基づいてバランスよく配置され、主張しすぎず、遠慮過ぎず、このアルバムにPCOらしい爽やかさと美しさと深さを与えているのだと思う。(本郷 泉 Izumi Hongo)
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