#  このCD2012海外編#04

『Ryan Truesdell presents Centennial - Newly Discovered Works of Gil Evans』
text by 稲岡邦弥


ArtistShare

Henrik Heide(fl,picc) Jesse Han(fl,picc,b-fl) Jennifer Christen(oboe) Sarah Lewis(oboe) Ben Baron(bassoon) Michael Rabinowitz(bassoon) Alden Banta(bassoon,contra bassoon) Steve Wilson(ss,as,fl,cl) Dave Pietro(as,sl,fl,a-fl) Donny McCaslin(ts,cl) Scott Robinson(ts,cl,b-cl) Brian Landrus(bs,b-cl,a-fl,picc) Charles Pillow(fl,picc,cl,oboe,E-horn) Adam Unsworth(F-horn) David Peel(F-horn) John Craig Hubbard(F-horn) Augie Haas(tp) Greg Gisbert(tp) Laurie Frink(tp) Ryan Keberle(tb) Marshall Gilkes(tb) George Flynn(b-tb) Marcus Rojas(tuba) James Chirillo(ac-g,el-g) Romero Lubambo(ac-g) Frank Kimbrough(p,harmonium) Jay Anderson(b) Lewis Nash(ds) Joe Locke(vib) Mike Truesdell(timpani,marimba) Dave Eggar(tenor violin) Dan Weiss(tabla) Kate McGarry(vo/#2) Wendy Gilles(vo/#8) Luciana Souza(vo/#10)

1. Punjab
2. Smoking My Sad Cigarette
3. The Maids Of Cadiz
4. How About You
5. Barbara Song
6. Who'll Buy My Violets
7. Dancing On A Great Big Rainbow
8. Beg Your Pardon
9. Waltz/Variation On The Misery/So Long
10. Look To The Rainbow

Produced by Bryan Truesdell
Engineered by James Farber

ギル・エヴァンス (1912-1988) の生誕100周年が特集も組めないままに過ぎていく。ギルは、作編曲家、バンドリーダーとしてジャズ史上に大きな功績を残した偉大な音楽家のひとりだが、個人的にも大好きなミュージシャンで、マイルスのベストにはギルと組んだ『スケッチズ・オブ・スペイン』(1966)や『ポーギー&ベス』(1968)を推すことも多い。幸いにも80年代には菊地雅章(JTで名前に触れることを許されていないが、この場面では禁を犯すのも致し方ない)の仕事を通じて近しく接触する機会も多く、その人間性にも触れることができた。(http://www.jazztokyo.com/inaoka/v10/v10.html)。
このアルバムは、ギルのスコアのアーカイヴに触れるチャンスに恵まれたライアン・トゥルースデルが、未発表のスコアから10曲を厳選し1枚のアルバムに仕立てたものである。クロード・ソーンヒル(#3、#6、#8)やトミー・ドーシー(#7)などのスイング時代のビッグバンドからヴォーカリストをフィーチャーしたバンド(#10)を経てモード揺籃期のスモール・アンサンブル(#1、#2、#4)から近年の自身のオーケストラ(#5、#9)に至るギルのキャリアの変遷を浮かび上がらせる個人のアンソロジーである。しかし、プロデューサーでもあるライアンは、これを編年史とすることなく組曲風にまとめ上げ(オープナーのPunjabの前にタブラの印象的なイントロを加えアルバム全体のイントロとしている)、ギルのファン以外にも広くアピールすべく配慮を尽くした。永年のギルのファンは聴き込んだ各時代のギルの名作に思いを馳せるだろうし、初めてギルの音楽に触れたファンはその豊穣な音世界に魅了されギルの過去の作品をひもときたい誘惑に駆られるだろう。今月初来日(ブルーノート東京)したマリア・シュナイダーとの音楽的パートナーシップが長いだけに、フランク・キンボロウ(p)などシュナイダー・オーケストラと共通するメンバーもみられ、それぞれ熟達者だけにギルや指揮を務めたライアンの音楽的要求に十二分に応えている。さすがにギル自身が参加したオーケストラのようにオーケストラ全体を泳がせるような場面は見られないが、ギルの意図した緻密な音楽世界は見事に再現されており、これ以上は望むべくもない模範的な演奏といえよう。ギルの申し子のようなマリア・シュナイダーやギルの影響を受けたと思われる先頃NYでデビュー・アルバムを発表した作編曲家の垣谷明日香の活躍が期待されるなか、じつに時宜を得た企画である。
ArtistShareレーベルは、レコード制作に際してミュージシャンが企画を発表、ファンからの出資を募り制作資金に充てる手法を最初に採用したレーベルとして知られる。独自のデジタル配信を通じて流通させているため、日本では馴染みが薄いと思っていたが、永年ビッグバンド・コンテストを主催している山野楽器銀座店ではCDを扱っていた。このCDの他、ArtistShare からブレイクしたマリア・シュナイダーの全CDも来日を前にして特別コーナーが設けられていた。(稲岡邦弥 Kenny Inaoka)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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