# このCD2012海外編#06
『Yaron Herman/Alter Ego』
text by 望月由美
ACT Music ACT 9530-2 |
Yaron Herman (p)
Emile Parisien(ts)&(ss)
Logan Richardson ( as)
Stephane Kerecki( b)
Ziv Ravitz (ds)
1. Atlas and Axis (Yaron Herman)
2. Mojo (Yaron Herman )
3. Heart Break Through (Yaron Herman )
4. Your Eyes (Yaron Herman )
5. La confusion sexuelle des papillons (Yaron Herman )
6. Ukolebavka/ Wiegenlied (Gideon Klein)
7. From Afar (Yaron Herman )
8. Sunbath (Yaron Herman )
9. Homemade (Yaron Herman )
10. Hatikva (Samuel Cohen)
11. Mechanical Brothers (Yaron Herman )
12. Madeleine (Yaron Herman )
13. Kaos (Yaron Herman )
プロデュサー:Yaron Herman&Christophe Deghelt
エンジニア:Philippe Gaillot
録音:At Recall Studio,Pompignan, France, February 25 - 28, 2012.
軽い爽やかさを売りにし、耳馴染みのよい作品が多く目に付くようになってきている昨今、ヤロン・ヘルマンの新作『Alter Ego』はそうした風潮を吹き飛ばすような意欲的な作品で、ジャズにも創造的な進化の可能性があることを示してくれている。本作はまた心新たにジャズを聴こうという気持ちにさせてくれる作品である。
ヤロン・ヘルマンにとって管入りの編成は今回が初めてであるが、ヤロンのカルテットは一般的なワン・ホーン・カルテットとは趣を異にしている。全曲が細部にいたるまで緻密にアレンジされていて、よくあるアドリブのたらい回しのようなところは全くなくヤロンの思い描くイメージで統一されている。そして全編にわたってヤロンの粒立ちの良いピアノが聴け、透明感をたたえたリリシズムが満ち満ちている。
ヤロンのピアノは前作『フォロー・ザ・ホワイト・ラビット』(ACT/Videoarts)にくらべ一段と洗練されていてみずみずしさを増し、タッチもよりダイナミックになり自信に溢れている。そしてなによりも発想が豊かで、ヤロン・グループの醸し出すサウンドは、まるで物静かな風物詩のような情景を描き出す。ヤロンはイスラエル国歌(10)<Hatikva>などの2曲で自らのジャズのルートをアフロ・アメリカンではなく祖国イスラエルに求めているようで、ヤロンの心象が感じられ胸を打つ。
二人のリード奏者エミール・パリジャン(ss,ts)とローガン・リチャードソン(as)も木管楽器の美しさを際立たせクールなサウンドでヤロン・ミュージックの実現に貢献している。1981年7月21日テルアビブ生まれ、31歳になったヤロン・ヘルマンの5枚目のリーダー・アルバム『Alter Ego』(ACT)には平和な静けさとダイナミックなパワーが交錯しヤロンの新しい世界が開けている。
ヤロンのACT第2弾『Alter Ego』は管を加えたことにより、よりサウンドが豊かになり心の内にしみこんでくる。ヤロンの描く音楽は紛争の絶えない中東の平和を願う祈りのようにも受けとめられる。
当初、ヴィジェイ・アイヤーかヤロンかどちらにしようかと思案したがヤロン・ヘルマンをこれからのジャズ・シーンを活性化し、牽引してゆく一人として「2012年この一枚」に選定させていただいた。 (2012年12月 望月由美)
関連リンク:
http://www.jazztokyo.com/five/five949.html
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