# このCD2012海外編#09
『Zen Widow feat. Wadada Leo Smith/Screaming in Daytime (Makes Men Froget)』
text by 杉田誠一
pf MENTUM CD069 |
Screaming in Daytime (Makes Men Forget)
Zen Widow:
Gianni Gebbia (as)
Matthew Goodheart (p, electro-acoustic gongs and cymbals)
Garth Powell (ds, perc)
Special guest artist-Wadada Leo Smith (tp)
1. Gifts We Have Forgotten
2. Notated Memory
3. Black On White Paper
4. This Seeming Dream
5. Musa Physics
*All compositions by Gebbia, Goodheart, Powell, and Smith
Recorded Live to two-track analog at Ocean Way Recording-Studio A-Hollywood, California by Mike Ross (second engineer Patrick Spain)
Production and generous implementation of Audioquest microphone cables with DBS technology by Joe Harley
Mastered by Bernie Grundman-Bernie Grundman Mastering, Hollywood, California
Disc Manufacturing and 1:1 glass mastering-Groove House, Woodland Hills, California
AACMのトランペッター、レオ・スミスと初めて出会ったのは、1969年7月、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジである。
AACMのサックス奏者、モーリス・マッキンタイヤーと初めて出会ったのは、69年7月、シカゴのサウスサイドである。モーリスは、現在、ニューヨークでホームレス(正しくは、生活保護者というべきか?正確に把握しているわけではないが、日本の生活保護者=ミュージシャンは、月に15万ぐらいもらえるらしい)をやっている。ステージは路上であり、地下鉄である。
レオ・スミスの新作は、『Zen Widow/Screaming in Daytime (Makes Men Froget)』(pf MENTUM) 。録音は2012年。
初めて出会ったレオ・スミスは、上半身裸で、ブリーカー St.の<ピース・チャーチ>で、どこまでも静的に、数理的というか、幾何学的に未踏のテクスチャを構築していく。精悍なボクサーだとばかり思っていたら、実は有名な数学者だったって感じだ。
そうそう、同じくAACMのアンソニー・ブラクストン(マルチ・リード)も言っていました。ブラクストンは、元来数学者。「本気でチェスで生きるか、音楽で生きるか、真剣に悩みました」。
さて、Zen Widowのリーダーは、ジャンニ・ゲビア(as)、シシリー人である。この『Screaming〜』で3枚目のアルバムとなる。もともとジャンニは、1990年代に禅(臨済宗)の修行のために来日。フリーのベーシスト、吉沢元治と出会い、フリーフォームを血肉化していく。法命を「常楽」という。その後、何度も来日しているのだけれども、定宿は浅草だとか。
去る2012年12月20日、マルコス・フェルナンデス(snare)とのデュオで初めてジャンニと出会う。淡々と、精緻に、フリー・フォームがソリッドに構築されていくのだけれども、そいつが、ちょっといままで耳にしたことがないほど、ホットなのだ。
陳腐ないいようではあるが、ZENのクールさとでもいうのだろうか?ライナー・ノーツによれば、バークリーで「グレン・スペアマン」と1年間一緒にやって、大いに影響を受けたというが、「グレン」についてぼくは知らない。
ジャケットを広げて、大感激。レオ・スミスは、髭を蓄え、長髪。“Wadada”レオ・スミスとは、イスラム名に違いない。『Screaming in Daytime』は、レオ・スミスが大きくフィーチャーされているというだけで。2012年度のベストである。あのAACMの「いま」がここにある。
あの筋肉質でソリッドな理論武装を吹っ切った、いわば“素”のレオ・スミスがここに存在する。リロン武装から解き放ったのは、Zen Widowである。
たとえば、マシュー・グッドハート(p)は、忠実なセシツ・テイラーの後継者である。Zen Widowには、ガス・パウエルというds、percはいるが、ベースがいない。しかし、グッドハートは、ゴングやシンバルを駆使する。AACMの精神は、しっかりと継承されているのだ。
レオ・スミスは、リズムからついに、解放された。いや、ハーモニーからすら解き放たれたのです。聴きたまえ、このなめよらかにうたう、レオのよどみないメロディを!!
ポスト・インプロバイズド・ミュージックの到達点がここにある。AACMよ永遠(とわ)に。(杉田誠一)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.