今年のベスト海外は、菊地雅章トリオ『サンライズ』以外には、無い。橋爪亮督グループ『アコースティック・フルード』と２枚、同着１位だ。

生来の天邪鬼なわたしは、Jazz Tokyoでは『サンライズ』(ECM) が過半を占めるだろう当然の結末に、さらに一歩進んで、マサブミ・キクチやポール・モチアンとの共演に間に合わなかった、というべきか、来たるべき共演を期待して。９０年代最強のギタリストだと思っていた怪物は生きていた！と、ここで耳目を集める博打を打っておきたくなった。

ギター・ソロは、デレク・ベイリーと、その後のよもやの大友良英のソロ作品、で、そこから先を聴くことは無いと思っていた。

可能性としては、夏に体験した菊地雅章ＴＰPトリオのトッド・ニューフェルドにあるかと思っていたが。あ、ＴＰＴトリオの間違いね。

ギターはジャンルを越境する楽器である。

エレキでもプリペアドでもない、何の仕掛けもない、１本のアコースティック・ギター。

「録音するホワイトノイズが立ち上がって、すわ、チューニングがはずれた筝のような点描と木製の反響箱が叩かれるリズムに仰天し、引き込まれる。ノンイディオマテックというよりパンイディオマテックな瞬時の放射が連続している。よほど演奏の引き出しと着想の自由度と速度、それにアタックの強さが無ければ、このようにはならない。マルク・デュクレでなければ、この危険な冒険は成功しない。」（タガララジオ３３）

マルク・デュクレは人類のギター史を背負ってつまびいているが如きなのだ。（多田雅範 Niseko-Rossy Pi Pikoe）