# このライブ/このコンサート2012海外編#06
『オール・アバウト・ハインツ・ホリガー』
text by 多田雅範
2012年10月6日(土)・8日(祝) すみだトリフォニーホール
Concert Report #472 「オール・アバウト・ハインツ・ホリガー」がベストでした。
http://www.jazztokyo.com/live_report/report472.html
ミュージシャンがおのれのキャリアを更新するような、まったく異なった資質で世界に問いかけるような、そして、挑戦的な態度ではなくむしろ降ってくるような音楽を伝達してくれること。
「ポリーニ・パースペクティブ2012」(2万5千円×4夜+6千円×2夜)という、垂涎もののコンサートもあって、こちらはよだれは垂らしたけれど貧乏人には手が届かない。今や全盛期と言えるアンドラーシュ・シフはかみさんを質に入れて娘を女郎屋に売り飛ばしてでも行きますし、実際行きましたし、行った価値もあったわけでしたが。ポリーニ70さい、は、いかにポリーニであっても最盛期とは言えないだろう、20世紀最高のピアニストであることはCDからでも充分にわかる、やはりクラシックは生で体験したい。この年末にNHK-BSで4時間「ポリーニ・パースペクティブ2012」を録ることができた。なるほど。やはり70さいなポリーニの現在だ。録画でさえ、これだけの響きを湛えているのであるから、コンサートでは、さぞかし、である。録画で視聴した感動は、生で聴いた感動に絶対届かない。
クラシックの月刊誌はレコード芸術とネーミングされ、ジャズは黄金期の録音物によって体験される。
クラシックはライブだ!ジャズはCDだ!と、見るからに誤った判断をするわたくしは、やや混乱している2012年です。ジャズのトップ2枚に選んだ菊地雅章も橋爪亮督グループも、ライブでCDよりもさらにすごい体験をしていた裏打ちによるものですし。
それはさておき。
ハインツ・ホリガーとマウリツィオ・ポリーニは、太陽と月の様相。
この世のものとは思えない音楽体験。そういうものが、わたしたちの生きている日常生活の中にあるということ。確かにあるんだという確信を与えてくれる、コンサート体験。
タイムテーブルになったり、書面になったり、業務内容になったり、新聞記事になったり、政治になったり、お金や数字になったりすることども、からの開放。
(さっきテレビで観た惨敗した民主党の代表選挙で候補者のバックにビートルズ1964の写真が掲げられているのはとっても不快だわ)
それは、音楽が宗教的なことであることを担保している。
「...こう、世の中の信頼というか、情報はどれも怪しいし、被爆してるような気がするし、やっぱみんなどこかオカシーよ、どこか震災以降大きなダメージを受けた世界観にあって、揺るぎないものはあるからね!と笑顔で熱血でチャーミングで後頭部の白髪がハネ上がってガッツポーズをするスイスからやってきてくれたホリガーなのだ」
わたしは思い出しながら、2013年はあんまり悪いことをしないで、できるだけみんなに優しくして、またそんな体験をできるように健康に気をつかって生きてゆこうと、吉田秀和さんがお隠れになったことも想いながら、考えるのである。(多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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