# このCD2013国内編#01
『Otomo Yoshihide|Sachiko M|Evan Parker |John Edwards|Tony Marsh|John Butcher/Quintet - Sextet』
text by 剛田 武
OTO roku ROKU009 |
A Quintet
B Sextet
Otomo Yoshihide - Guitar
Sachiko M - Sampler
Evan Parker - Saxophones
John Edwards - Double Bass
Tony Marsh - Drums
John Butcher - Saxophones (Side B)
Recorded by Shane Browne at Cafe OTO, 9 March 2009
Mixed by John Butcher
Mastered by Andrew [LUPO] Lubich at Calyx
Design by Paul Abbott
俗っぽい言い方だが、今年の即興音楽界のトップニュースの筆頭は大友良英の大躍進に違いない。80年代から前衛音楽・ノイズの闘士としてシーンをリードしてきた大友は、これまでもテレビ/映画音楽の作曲家として評価されていた。また、2011年に大震災と原発事故に見舞われた福島支援のために発足した「プロジェクトFUKUSHIMA!」の企画者として社会的に注目されもした。しかし今年、たったひとつのテレビドラマが、そうした地道な活動による評価を遥かに超えるセンセーションを巻き起こした。大友本人と関係者及び即興音楽ファンに困惑と興奮をもたらす一方で、舞台になった東北は勿論、全国各地で人々を勇気づけた『あまちゃん』旋風は、大友が馴染みの仲間と創り上げた音楽がなければ違うものになっていたのも確か。大友は劇伴音楽に、卓越した音楽センスに加え、ヨーロッパのクレズマーや自らの出自のジャズやノイズミュージックの要素を編み込んだ。「潮騒のメモリー」を共作したSachiko Mのエクストリームなサインウェイヴが一般家庭に流れたのは、ある意味究極のアヴァンギャルドだと言えよう。
昨年夏のフェスティバルFUKUSHIMA!で「ノイズ電車/ノイズ温泉」という前代未聞のカオス企画を非常階段のJOJO広重等と共に決行した大友は、再び昨年末に新宿ピットインで「ノイズ電車in PITINN」というケイオティックな大騒動を演出した。その2日後に「潮騒のメモリー」のデモを録音したというから、ノイズと「あまちゃん」には深い絆があるはずである。奇しくも「ノイズ電車」共謀者の非常階段がアイドルやボーカロイドとの共演で活動の新局面へシフトしたことを考えれば、カオスこそが大友と非常階段の躍進のバネになったともいえるだろう。
ロンドンの先鋭的ライヴハウス、Cafe OTOで2009年に大友とSachiko Mが三日間のレジデンス公演をした際のエヴァン・パーカー・トリオ+ジョン・ブッチャーとのセッションを収録したこのアナログ盤は、コレクティヴ・インプロヴィゼーションの極意が刻み込まれた生々しいドキュメントである。即興音楽が21世紀に於ける最前衛の表現足り得ることを証明する記念碑的なレコードを、大友良英&「あまちゃん」スペシャルビッグバンドコンサート会場の“紅白の殿堂”NHKホールで購入するという行為こそ、カオス渦巻く2013年の総括に相応しいのかもしれない。(剛田 武 2013年12月12日記)
剛田 武(ごうだ・たけし)
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務。
ブログ「A Challenge To Fate」
http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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