2013年もアーカイヴ音源からインディーズまで様々なジャズに接したが、「20年前からあったとしてもおかしくない20年後も観賞に耐えうるであろうジャズ」への関心はどんどん薄れており、「2年後には古びてしまうかもしれないが現在を強烈に感じるジャズ」という基準でフィルターをかけた結果、このディスクを紹介したいと思った。
　ポーティコ・カルテットは英国のピーター・ガブリエルのレーベルからリリースしている４人組。パーカッショニストは「ハング」というスイスで開発された金属楽器を使用していて、これがスティール・ドラムとゴングの中間のような音を出し、ミニマル・ミュージックに軸足を置くグループのサウンドにガムラン的なニュアンスを与える。サックス奏者が前面に出た曲はコンポジションも楽想も既存の“ジャズ”を想起させる点で足腰の弱さが垣間見えてしまうが、グループが最近志向する電子音とハングをひたすらミニマルに反復させるナンバーにおける独創性は、他に類を見ない。00年代初頭のノルウェー・ニュー・ジャズ勢の台頭以来の新鮮な刺激を感じるグループだ。
　似た観点でいうと「Live With Britten Sinfonia / Jaga Jazzist」、「Pax Volumi /Youngblood Brass Band」「Holding It Down: The Veterans' Dreams Project /
Vijay Iyer & Mike Ladd」「Green Lands / Noël Akchoté」「1/1 / Nils Petter
Molvaer & Moritz von Oswald」も楽しく聴いた。日本ではオープン・リール・デッキ４台による即興ユニットのオープン・リール・アンサンブルがステージ・パフォーマンスの求心力も圧倒的で現在形のジャズであると僕は感じた。本年リリース作として「Tape and Cloth ~ Open Reel Ensemble and ISSEY MIYAKE」の名を挙げておく。（今村健一）