#  このCD2013海外編#06

『The Wayne Shorter Quartet/Without A Net』
text by 望月由美


Blue Note Records

Wayne Shorter (ts,ss)
Danilo Perez(p)
John Patitucci( b)
Brian Blade (ds)
(注)6.PegasusのみThe Imani Windsが加わる
The Imani Winds:
Valerie Coleman(fl)
Toyin Spellman-Diaz(oboe)
Mariam Adam(cl)
Jeff Scott(frh)
Monica Ellis(basoon)

1. Orbits(W.Shorter)
2. Starry Night (W.Shorter)
3. S. S. Golden Mean (W.Shorter )
4. Plaza Real (W.Shorter )
5. Myrrh (W.Shorter )
6. Pegasus (W.Shorter )(注)
7. Flying Down to Rio (V.Youmans,G.Kahn,E.Eliscu)
8. Zero Gravity to The 10th Power (W.Shorter,D.Perez,J.Patitucci,B.Blade)
9. (The Notes) Unidentified Flying Objects (W.Shorter,D.Perez,J.Patitucci,B.Blade )

録音:
 2011年ヨーロッパ・ツアーでのライヴ録音 (6.Pegasusを除く)
 6.Pegasus:2010年12月8日、ウォルト・デイズニー・コンサート・ホールにて収録
エンジニア:Rob Griffin
プロデューサー:Wayne Shorter

 43年ぶりのブルーノート復帰作、そしてこのグループの鮮烈なライヴ・アルバム『フット・プリンツ・ライヴ』(verve)から10年、再びジャズの即興の新しい姿を示してくれた作品として「この一枚」に選ばせていただいた。
 ジャズはなんでもあり、と、様々な分野と融合して多様化をしてきている中で「ウェイン・ショーター・カルテット」はジャズの根っこは即興にあるということをあらためて指し示してくれた。
 ウェイン・ショーターの示す即興は、その場かぎりのひらめきだけではなく、深く考え、周到に練り上げられた構想の上での展開だからとても深く、洗練されている。
 ウェイン・ショーターは今年の8月で80歳になったがウェインの音はみずみずしく若々しい。テナーとソプラノを吹いているがソプラノはとりわけ官能的でスティーヴ・レイシー以来の透明なサウンドにひきつけられる。
 このウェインを支えるのはダニーロ・ペレス(p)、ジョン・パティトゥッチ(b)、ブライアン・ブレイド(ds)。これほどのトップ・ミュージシャンが12年にもわたってコンビを持続すること自体が奇跡的である。4人はそれぞれが銘々に過激な即興をくりひろげる。そしてウェインを軸に4人の音楽と向き合う方向がぎりぎりのところでバランスしているところからもの凄いスリルが生まれていて、メンバー相互間の緊張感と刺激をより高めているようだ。とりわけブライアン・ブレイド(ds)の、時に過剰とも思われるほどの激しいリズムが大きく作用しているように聴こえる。ブライアンのシンバルには恐ろしいほどのエネルギーが秘められているからだ。
 ウェイン・ショーターは今年の11月から来春にかけて80歳を記念するコンサート・ツアーを行なっている。アメリカ国内、カナダ、ヨーロッパをレギュラー・カルテットで巡るという。そしてウェインのホームページには今年の春に続いて2014年の4月14日と15日、東京、渋谷、オーチャードホールでのコンサートが予告されている。ウェイン・ショーター・カルテットを耳にしたファンからは、あらためて本アルバムが再認識されるに違いない。(2013年12月6日 望月由美)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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