#  このCD2014国内編#01

『青木智幸/望月治孝 - Tomoyuki Aoki / Harutaka Mochizuki』
text by Takeshi Goda


自主制作 限定 200部 / ¥2,000

Electric Guitar, Vocal-Aoki
Alto Saxophone, Vocal-Mochizuki

1 交わらぬ二重
2 私信−哀歌
3 断章
4 断章
5 長いお別れ
6 跳躍へのレッスン I
7 跳躍へのレッスン II
8 跳躍へのレッスン III
9 なぜぼくの手が

Track1,5-Music:Composed By Tomoyuki Aoki / Lylics: Tomoyuki Aoki
Track9-Music:Harutaka Mochizuki / Lylics: From Nobuo Ayukawa(なぜ僕の手が)
Track1,3,4,6,7,8-Improvisation

Recorded In Early Spring 2014 At A.B.U. Studio, Hamamatsu

録音・編集:青木智幸
ライナーノーツ:袴田浩之
写真撮影:ema
デザイン:望月治孝

2014年も相変わらずライヴ現場には足繁く通っているし、自宅や職場などで音楽を聴く時間にも変化はないが、CDを買う頻度はずいぶん減った。かといってダウンロードやYouTubeで満足しているわけではない。簡単に言えばCDという形態に魅力を感じないのだ。CD-Rとして複製可能/パソコンに取り込んでしまえば用済み/せっかく買ってもすぐにリマスターや未発表トラック追加や廉価盤で面替。同世代以上の音楽愛好家なら恐らく誰もが感じていることだろうが、CDでは蒐集の悦びを得ることはできない。だからアナログ・レコードに回帰しているのだ。購入するのはもっぱら中古レコードや過去音源のアナログ復刻盤が中心。新録新譜は、アナログ盤が出なければ、よほどのことがない限り購入する気にはならない、というのが正直なところ。

そんな中で、CD/アナログとは無関係に、筆者の心をもっとも激しく揺さぶったのが、静岡をベースに活動する不屈の精神を持つ二人の音楽家の共演CDだった。サックス奏者の望月治孝については、アナログ盤のみのソロ・アルバム『PAS[パ]』のレビューで詳しく書いたので、ギタリスト&シンガーの青木智幸について述べておこう。1992年に静岡県浜松市でロック・バンド「UP-TIGHT」を結成。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、裸のラリーズ、アモン・デュールといった暗黒地下ロックを継承するダークな情念と轟音ギターで異彩を放ち、日本はもちろん海外でも高い評価を得る。それ以来20年以上に亘り浜松をベースに独自の世界を貫く、世界的にも稀有な音楽家である。音楽性や演奏スタイルはジャンルに囚われず、ロック、サイケデリック、アシッドフォーク、即興、ノイズ、アンビエントなど多様な要素と交錯するが、核にあるのはロックへの「信念」に違いない。

「孤」として存在する望月と、「信念」を貫く青木による、比類なき「個」と「個」のエンカウンターは、単なる音楽と云うよりひとつの「思想」と呼ぶべきかもしれない。時代や社会の流れとは関係なく、「表現行為」とは確固たる思想性を創造することによってのみ、歴史を超越することが可能になるのであろう。

参考:『望月治孝/PAS [パ]』ディスク・レビュー
http://www.jazztokyo.com/five/five1120.html
(剛田武)

剛田 武(ごうだ・たけし)
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務。
ブログ「A Challenge To Fate」
http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
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COLUMN
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今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
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カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
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オスロに学ぶ
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INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
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CONCERT/LIVE REPORT
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