2001年にデビュー作をリリース、日米のジャズ界ばかりでなく、J-Popなど広々と大活躍してきたギタリストの最新作は、大手レコーズから新興インディーズに移籍、心機一転の気分をいい感じに引き締めた快作だ。今も変わらぬその魅力とは、文字通りの独創的なマナーと音色の美しさにあり、中でもアコースティック・ギターの取り扱いには目を見張るものがある。それで今回は改めてジャズに回帰したというが、直球気味なのはジョン・コルトレーンの〈インプレッションズ〉くらいで、ほかはジャズの新しい発酵の仕方が聴けるものばかり。それを聴いていくと次へ次へと止まらなくなるからいい。気心の知れた仲間と国内録音した、はやり廃りのない、穏やかな音楽のパルスに引き込まれるからだろう。これには何より、演奏家と作り手の息が合ってこそなのは言うまでもない。何かひとつ気の利いた言葉で括るなら、「オーガニック」だとか。いずれにせよ、それらの当たり総じて親しみやすいから、よく、かけっぱなしにしてきた。(成田 正)

成田 正　Tadashi Narita
1952年、埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。地元の小学校を卒業後、文京区の区立中学、都立高校を経て日大芸術学部映画学科へ。録音を専攻した。と同時にジャズ研でギターを弾いた。そのおかげもあって、1978年、創刊間もない『Jazz Life』編集部に入部。５年半ほど世話になり、次に真っ当な書籍出版社に３年半ほど腰掛けた後フリーに。目下、毎日新聞、Jazz Life、CDジャーナル、Stereoのほか、アルバム解説などあれこれ執筆中。