今年もほかの方が取り上げないだろう“ラテン・ジャズ”の分野から…。ジャズ界では鬼っこ扱いのこの分野だが、ファンにアピールする様な好アルバムも何枚か出されている。御大エディ・パルミエリのドキュメンタリー映画サントラ盤『ドゥーイン・イット…』、クインシー・ジョーンズもその才を高く評価しているキューバ出身の新進、アルフレッド・ロドリゲスの『インベンション・パレード』、日本の若き才媛ピアニスト、仲田美穂の邦人実力派を集結した『アリーバ』、日本在住の名手スティーブ・サックスのラテン・ジャズ・バンド”マンボ・イン“の新作（以前紹介しました）等々。どれも興味深いアルバムだが、やはり極め付きはあの天才、ゴンサロ・ルバルカバのニュー・ユニット「VOLCAN」 の同名デビュー作。厳密にはこのアルバム１３年の暮れ日本入荷だが、今年１月初めに来日公演を敢行、大評判を呼んだもので、少し反則だが今年のベスト作とした。ゴンサロ自身が設立したレーベルから出され、オラシオ・エルネグロ(ds)、ジョバンニ・イダルゴ(per)、アルマンド・ゴラ(b)と言う、まさにワクワクものの超絶技巧な達人揃い。内容もタイトル通り、ヴァルカン＝ボルケーノ（火山）の噴火の様な、熱く激しい迸りを展開。これぞラテン・ジャズと言った趣きがメインだが、それを乗り越える様な自由さ・尖鋭さも秘めている。（小西啓一）

小西啓一 Keiichi Konishi
ジャズ・ライター／ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。