#  このライブ/このコンサート2014海外編#04

『Norma Winstone - Winstone / Gesing / Venier Trio
ノーマ・ウィンストン - ウィンストン/ゲーシング/ヴェニエル トリオ』
2014年9月6日・7日 新宿ピットイン
text and photo by 神野 秀雄(Hideo Kanno)

Norma Winstone (Voice)
Glauco Venier (Piano)
Klaus Gesing (Soprano Sax, Bass Clarinet)

9月6日(金) 20:00
1. Time of No Reply (N.Draktse)
2. High Places (K.Gesing / Lyrics:N.Winstone)
3. Giant’s Gentle Stride (K.Gesing / Lyrics:N.Winstone)
4. Live To Tell (P.Leonard / Lyrics: Madonna)
5. A Tor A Tor (G.Venier / Lyrics: Trad.)
6. Gust Da Essi Viva (G.Venier / Lyrics: N.Winstone)
7. Everybody's Talkin' (F.Neil)
8. Second Spring (G.Venier)
9. It Might Be You (D.Grusin / Lyrics:A.&M.Bergman)
10. Pots and Pans (K.Gesing)
11. San Diego Serenade (T.Waits)
12. Lipe Rosize (Traditional / Arr. by G. Venier)
13. Slow Fox (K.Gesing / Lyrics:N.Winstone)

9月7日(土) 20:00
1. The Marmaid (G.Venier / Lyrics: N.Winstone)
2. High Places (K.Gesing / Lyrics: N.Winstone)
3. Giant’s Gentle Stride (K.Gesing / Lyrics:N.Winstone)
4. Live To Tell (P.Leonard / Lyrics:Madonna)
5. A Tor A Tor (G.Venier / Lyrics:Trad.)
6. Distances (G.Venier / Lyrics:N.Winstone)
7. Everybody's Talkin' (F.Neil)
8. Second spring (G.Venier)
9. Cucurrucucu Paloma (T.Mendez / Lyrics:N.Winstone)
10.Rush (K.Gesing / Lyrics:N.Winstone)
11.San Diego Serenade (T.Waits)
12.Lipe Rosize (Traditional / Arr. by G. Venier)
13. Bein Green (J.Raposo)
14. My Gospel (G.Venier)









「沈黙の次に美しい音」の原点を教えてくれた奇跡のライブ

“あらためて、響きの美しさ、沈黙の美しさ、つまり「沈黙の次に美しい音」の原点を教えてくれるような、このトリオの来日がいつか実現することを強く望みたい。”『Norma Winstone Trio / Dance without Answer』(ECM2333)CD評で結びに書いた言葉。「2014年このCD(海外)」にも選び、そこからリンクしているのでご参照いただきたい。2013年にはソウルと上海での公演がありながら、日本に来なかった失望感を感じている間もなく、そのいつかは驚くほど早くやって来た。
 イギリスのヴォーカリスト、ノーマ・ウィンストン、イタリアのピアニスト、グラウコ・ヴェニエル、ドイツのサックス/クラリネット奏者のクラウス・ゲーシングとのトリオ。2002年の『Chamber Music』(Universal)にはじまり、ECMでは、グラミーにもノミネートされた『Distance』(ECM2028)、『Stories Yet to Tell』(ECM2158)、そして『Dance without Answer』(ECM2333)と、12年以上活動し、計4枚をリリースしてきた。なお個人的には、ノーマをライブで聴くのは、1987年ニューヨーク「Fat Tuesday」での、ケニー・ホイーラー(tp, flgh)、ジョン・テイラー(p)とのユニット「アジマス」、2013年、先述のトリオのソウル公演に続き3度目となる。
「東京JAZZ」と同じ週末、異様な期待感に包まれた新宿ピットイン。1日目は『Dance without Answer』に収められた<Time of No Reply>で幕を開ける。この1曲だけでその甘美な響き合い、それが醸し出す優しさと切なさに涙が出そうになる。そしてクラウス作の<High Places><Giant’s Gentle Stride>へ、うつろうハーモニーの中にストーリーが展開する作曲の妙にもあらためて驚かされ、そして3人が見事に音を紡いでいく。一方、2日目は趣を変えて『Distance』に収められた「The Mermaid」のパーカッシブな感じの楽しいやりとりから始まり、よりリラックスした空気で始まる。そして<High Places><Giant’s Gentle Stride>へとつながる。数々の曲の中でグラウコの曲も、ノーマがつける美しく空間と心に響く歌詞も本当に素晴らしい。曲ごとの詳細については、すでに神子直之氏がライブレポートを書いているのでそちらに譲りたい。なお、セットリスト作成にあたってはクラウスが親切に対応してくれた。
 ノーマの声は、若い頃に比べれば物理的には衰えはあるだろうけれど、その芯にもつ美しさと強さは失われることなく、むしろ増しているかも知れない。そして言葉としての詩をメロディーの中で美しく響かせる力、グラウコとクラウスの生み出す透明なハーモニーの中で比類のないケミストリーが生まれる。クラウスのソプラノサックスとバスクラリネットは、木管楽器の究極とも言えるほど深く美しい。いや、これ以上美しい響きを聴かせる木管楽器奏者を知らないとさえ言いたい。その表現力には限界がないようだ。そしてグラウコのピアノの透き通った美しい響き、的確なタイミングとリズムで入ってくるフレーズとハーモニーが小音量でも空気を繊細に変えていく。
 3人の間には常に透き通った空気があり、沈黙が存在する。音楽を奏でるというだけではなく、ハーモニーとリズムへのとてつもなく繊細で深い理解力の中で、3人は「沈黙」の感覚をも共有し、演奏の中でむしろ「沈黙」を浮き彫りにする。その音楽と沈黙の狭間を見せてくれることで、冷たい感覚ではなく、心地よい緊張感の中で聴き手の心を解きほぐし、優しく切ない気持ちにさせてくれる。
 終演後に言葉をかわすと、奏法の話にも気軽に応じてくれるし、気さくで音楽に謙虚であり真剣であることが伝わる。話しているだけで、音楽同様に満たされ優しい気持ちになるのだから不思議だ。その3人の人柄と感性と音楽的才能が出会って素晴らしい音楽と沈黙が生まれ、そして日本でこうして聴くことができる。「沈黙の次に美しい音」の原点を教えてくれ、時間と空間を共有させてくれた希有な機会であり、奇跡の体験だった。
 ノーマ、グラウコ、クラウスの3人の素晴らしいミュージシャンと、来日を実現してくれた大沢知之(Office Ohsawa)に深く感謝しながら、再びの来日を心待ちにしたいと思う。

【JT関連リンク】
ノーマ・ウィンストン・トリオ 新宿ピットイン (Text by 神子直之)
http://www.jazztokyo.com/live_report/report724.html
第13回 東京ジャズ祭 '14 (Text by 悠 雅彦)
http://www.jazztokyo.com/live_report/report723.html
『Norma Winstone / Dance Without Answer』(ECM2333)
http://www.jazztokyo.com/five/five1096.html
追悼 ケニー・ホイーラー 「Azimuthのライブとクリニック」
http://www.jazztokyo.com/rip/wheeler/wheeler.html
「ECM: 沈黙の次に美しい音」展(ソウル)
http://www.jazztokyo.com/live_report/report574.html

【関連リンク】
Norma Winstone 公式ウェブサイト
http://www.normawinstone.com
Klaus Gesing 公式ウェブサイト
http://www.klausgesing.com
ECM Player “Dance without Answer”
http://player.ecmrecords.com/winstone-venier-gesing--dance-without-answer
ECM Player “Stories Yet To Tell”
http://player.ecmrecords.com/winstone
“Stories Yet to Tell” PV - Universal Music France (アイヒャーによる録音風景)
http://www.youtube.com/watch?v=7f0jKIGwz7Q

Dance Without Answer
(ECM2333)
2012
Stories Yet To Tell
(ECM2158)
2009
Distance
(ECM2028)
2007
Chamber Music
(Universal 9865960)
2002
Azimuth
(ECM1099)
1977

※現在は、『Azimuth/The Touchstone/Depart』(ECM1546)という3枚組の1枚目となっている。

神野秀雄 Hideo Kanno
福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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