# このライブ/このコンサート2015国内編#05
『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2015 - PASSIONS 恋と祈りといのちの音楽』
より、児玉麻里、児玉桃、酒井茜、エフゲニ・ポジャノフ、アルヴォ・ペルト他
La Folle Journee au Japon2015 - PASSIONS
Mari Kodama, Momo Kodama, Akane Sakai, Evgeni Bozhanov and Arvo Part etc.
2015.5.2-4 東京国際フォーラム Tokyo International Forum
text by Hideo Kanno 神野秀雄
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」は、これまで作曲家や時代をテーマに選んできたが、概念的なテーマへ移行、2015年は「PASSIONS パシオン」として、作曲家たちの創造の根源にある「魂の奥底から放たれる強い感情」を通して約400年の時代を旅した。この試みは音楽的には成功し、興行的、プロモーション的には大きな課題を残した。今回、特に印象に残ったのは、海外を拠点に活躍する日本のピアニストたちの快演だ。詳細はコンサートレポートをご参照いただきたい。
#151 酒井茜とエフゲニ・ポジャノフのピアノデュオによる、モーツァルト<2台のピアノのためのソナタ>?は、それぞれ独自のグルーヴを秘めながらときに会話するようにときに闘うように、“ジャズ”を超える究極のインタープレイを魅せた。酒井はその自由な感覚のため世界の名手との共演でとてつもないケミストリーを生み出すことがあり、その一端として2014年のルガーノにおけるマルタ・アルゲリッチとのライブ録音を含む『春の祭典』(キングインターナショナル)を2015年8月にリリースした。
#165 児玉麻里はベートーヴェン<ピアノ・ソナタ>全32曲のコンサートを行い、全曲をCDに録音するという偉業を成し遂げているが、その中から3曲演奏された。その明晰な感覚と確かなタッチ、ダイナミックレンジの広さの中で、ベートーヴェンの多様な表情と内面を描き出す素晴らしい演奏だった。
#221児玉桃ソロ公演はメンデルスゾーンとシューマンの恋のパシオン。『鐘の谷』(ECM NS2343)で鮮烈な印象を残した児玉桃だが、ここでもピアノを直感的にではなく巧みに絶妙に操り、その美しい響きの中で作曲家の想いを鮮明に浮かび上がる。なお、横須賀でのコンサートでは『鐘の谷』に収録されたラヴェル<鏡>も聴くことができ、その感覚をさらに強く持った。(同公演での竹澤恭子とのラヴェル<ヴァイオリン・ソナタ>における不思議な“ブルース&ジャズ”の感覚、さらに堤剛が加わったチャイコフスキー<ピアノ三重奏曲 第1番>も素晴らしかった。)
#257児玉麻里、児玉桃によるメシアン<アーメンの幻影>では、メシアンへの敬愛と研究に裏打ちされて、美しい響きに満たされ、力強く、歓びと希望を秘め、光と色彩を感じさせる素晴らしい演奏となった。
ECMニューシリーズを代表するエストニアの作曲家アルヴォ・ペルトが取り上げられ、#246ヤーン=エイク・トゥルヴェ指揮 ヴォックス・クラマンティスで、<ヨハネ受難曲>が演奏されたことも特筆したい。2015年、エストニア出身のパーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団の首席指揮者に就任、「エストニアに自分のアイデンティティーを強く感じています。人口130万人の小国の文化を世界に紹介することも自分の大切なミッションのひとつと考えています。」と語っており、ペルトが日本でも演奏の機会が増えることを楽しみにしたい。
2016年のテーマは「la nature 自然と音楽」、会場に日比谷野外音楽堂も加わる。2015年の成果と問題点を踏まえて、ルネ・マルタンに導かれた新たな発見と興奮、幅広い層への浸透を両立した成功を期待したい。
詳細は、コンサートレポートを参照。
http://www.jazztokyo.com/live_report/report817.html
横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ43〜竹澤恭子 堤剛 児玉桃
http://www.jazztokyo.com/live_report/report835.html
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016〜la nature 自然と音楽
http://www.lfj.jp/lfj_2016/
酒井茜&マルタ・アルゲリッチ/ストラヴィンスキー 春の祭典 他 (キングインターナショナル)
Mari Kodama / Ludwig van Beethoven : The Complete Piano Sonatas (Pentatone)
Momo Kodama / La valle des cloches (ECM NS2343)
Arvo Pärt / The Hilliard Ensemble - Passio (ECM NS1370)
神野秀雄 Hideo Kanno
福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの“共演”を果たしたらしい。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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