# 1017
『ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14/ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団』
text by 藤原聡
エクストン(オクタヴィア・レコード) OVCL-00504(SACDハイブリッド) \3,200(税込) |
曲目 ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14
演奏 ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団
2012年12月20日、東京文化会館でのライヴ・レコーディング
プロデューサー、エンジニア:江崎友淑
ご紹介するCDは、都響のプリンシパル・ゲストコンダクターを2010年より務めるチェコの俊英ヤクブ・フルシャの指揮によるベルリオーズの幻想交響曲。これ、凄いですよ。冒頭序奏より緻密に整えられたパート・バランスとダイナミクスにまずは唸らされる。ここを聴いただけでも指揮者、只者ではないと思わされる。主部は基本的には早めのテンポを採用しつつ、ハッタリとは無縁に端正な音楽を進めていくのだが(これは第3楽章までに共通する印象)、オケのコントロールと音楽性が抜群なので、とにかく聴き惚れてしまうこと必至である。第2楽章のワルツではオプションのコルネットのオブリガードを追加しつつも、かなり抑制した使われ方がされているのが興味深い(ちなみにコーダのテンポの扱いは個性的!)。第3楽章、ここでは音楽外的な心理描写などの意図はまるでなく、スコアに書いてある音符を綿密極まりない手つきでレアリゼするという姿勢であるがゆえに、ハイパーリアリズムの絵画を見るかのような凄みがあぶり出されて来る。
さて、では楽曲の最大の聴かせどころ(と目されている)第4〜5楽章をどう料理しているのか? ここでフルシャはより冷静沈着に振舞っているのである。基本テンポは少し遅め(ここまでは中庸かむしろ早め)。ここでも金管とパーカッションのバランスは緻密にコントロールされ、決して暴れない。アーティキュレーションも明晰の極み、Esクラリネットのイデー・フィクス登場は冷静であるからこそ妙な距離感を感じさせて秀逸(音色がシニカルなのがよい)。考えてみれば、阿片を飲み昏睡状態に陥って夢を見たという時点で自我は分裂しているということであり、「騒動」に巻き込まれている自分を離れた所からひとごとのように眺めるもう1人の自分がいる訳である。ここでのフルシャの冷静沈着なスタンスは、演奏者の感情移入しまくりの「爆演」よりもある意味で楽曲の特異性をあぶり出すことに成功しているのだ(言うまでもなく音楽的な面での指揮者のイデーが徹底され、それをオケが完全に音に出来ているからこそ、だが)。これは面白い。このCD、もちろん「幻想」初体験の方にもお薦めだけれど、百戦錬磨の「幻想」マニア(なんだ「幻想マニア」って-笑)にはより面白いと思う。ちなみに録音は大変秀逸、拍手入り。
(藤原 聡/タワーレコード梅田NU茶屋町店)
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