# 1028
『リチャード・ボナ/ボナファイド』
text by 神野秀雄
Universal Music France/ユニバーサル・ミュージック UCCM-1224 \2,600(税込) |
![]() |
Richard Bona(b,vo,g,perc,balafon)
Entenne Stadwijk(p)
Osmany Parades(p)
Michael Rodoriguez(tp)
Obed Calvaire(ds)
Luisito Quintero(perc)
Gil Goldstein (string arrangement)
Eriko Sato(vn)
Joyce Hamann(vn)
Louise Schulman(va)
Dave Eggar(vc)
Vincent Perani(acc)
Camille Dalmais(vo)
Sylvain Luc(g)
1. Dunia E
2. Mut’Esukudu(Sadrack M’bondi Kollo)
3. Akwappella
4. Janjo La Maya
5. Mulema
6. Uprising Of Kindness
7. Tumba La Nyama
8. Diba La Bobe
9. La Fille D’A Cote(Richard Bona/Camille Daomais)
10. Socopao
11. On The 4th Of July(James Taylor)
All compositions by Richard Bona except 9, 11
Produced by Richard Bona
Recorded at Avatar Studio,Bonayuma Studio and Shelter Island Studio.
チェロから静かに始まり、ギターとピアノが優しく絡み、ボナが歌い出す。いつものリチャードのサウンドへの期待を裏切らないが、これまでのように明確なグルーヴ感を打ち出し、ときにダンサブルな音楽に比べて、歌により重きをおき、より穏やかに静かに優しく歌い上げる傾向になっている。アコースティック色が強まり、曲によってはギル・ゴールドスタイン編曲によるストリングス・カルテットの音が穏やかに包み、ピアノやパーカッションも歌に優しく寄り添う。いや、穏やかな外見の先にこそ、心から湧き上がる力強い想いとグルーヴがある。
このアルバムは故郷の祖父に捧げたという。リチャードは1967年カメルーンのミンタ村に生まれる。3歳のときに、祖父がリチャードにはミュージシャンの才能があることを見出し、リチャードは手作りで最初の楽器を作ることになった。祖父がなければ今のリチャードはなかった。それは苦難の道の始まりでもあったが、音楽に祝福され、とくに母親が温かく見守ってくれたと感謝を込めて自らジャケットに記している。1989年、22歳でパリに渡って音楽を学び、セッションを重ね、ジョー・ザビヌルにも出会う。1995年にマンハッタンに移り、ジョーに再会「ザビヌル・シンジケート」のワールドツアーに参加、以降ニューヨークを中心に世界を舞台に活躍しているのはご存知の通りだ。
ユニバーサルのウェブサイトによると「ぼくたちの世代が甘受した、この地球の美しさや、人の優しさを次世代につなげるためにこのアルバムを作った」「アコースティックな要素を多くしたのも、アルバムでは初めてだ。メロディもミニマルにして、心を届けることを大切にした」。アルバム全編にわたって、リチャードの優しい想いが溢れている。ただ幸福感だけでなく、切なさも強く現れ、その混合がより広く複雑な世界観を見せる。
最後は、ジェームス・テイラーの<On the 4th of July>をシルヴァン・リュックとのデュオで、インストで奏でる。オリジナルが素晴らしい曲だから取り上げたのはもちろんだが、ヨーロッパで先行発売され、世界に向けたメッセージとなるアルバムをアメリカ建国記念日をタイトルに締めくくる意味は興味深く、いつか本人から語られることを期待したい。
9月21日ノルウェー・オスロからBonafied Release Tourが開始され、10月19日のフランス・マルシアックまでツアーが続く。いつか、この音をアコースティックな響きの中で聴くことを楽しみにしたい。(神野秀雄)
【関連リンク】
リチャード・ボナ公式ウェブサイト
http://www.bonamusic.com
リチャード・ボナ ユニバーサル・ミュージック・ジャパン
http://www.universal-music.co.jp/richard-bona
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.