#  1036

『藤原清登トリオ/I’ll Catch the Sun』
text by 稲岡邦弥


Garganture T-133 2,500円

藤原清登(b)
ダヴィデ・サントルソラ(p)
福家俊介(ds)

1. These Boots Are Made For Walkin' (Lee Hazlewood)
2. A Boy & Beauty (Kiyoto Fujiwara)
3. Lo Straniero (Ihojin / Saki Kubota)
4. The Girl From Ipanema (Antonio Carlos Jobim)
5. Filthy McNasty (Horace Silver)
6. I'll Catch The Sun (Rod McKuen)
7. Liberated Brother (Weldon Irvine)
8. Rain (Kiyoto Fujiwara)

Recorded & mixed by Nick James
Recorded at Sunrise Studio, Tokyo, March 27, 2013
Mixed at SoundsVoodoo, Tokyo
Mastered by Sean Magee at Abbey Road Studios, London
Produced by Kiyoto Fujiwara

あの藤原清登が大変身!? というわけでもないだろうが、新譜を聴いて驚いた。
開口一番ナンシー・シナトラの<にくい貴方>である...。1966年の大ヒットで、これは僕もリアルタイムで何度も聴いている。原曲のベースギターの下降するラインが印象的でナンシーのセクシーな歌声と共に耳にこびりついている。原曲通りのその印象的なベースラインがこの新作のイントロとなる。しかも藤原の、腹にこたえる図太いベース音で。ピアノもドラムスも頑張っているがベースの存在感が圧倒的である。ソロはもちろん、全編を通じてベースが縦横無尽に唸りまくる。録音(ミックスも)とマスタリングはイギリス人ということだがじつにベースらしい音がしている。これがベース好きにはたまらない。適度な粘りと伸び。楽器もイタリア製のアンチークで良く鳴るのは事実だが。
2曲目は、<A Boy & Beauty>。「美女と野獣」という映画があったが、これは「少年と美女」。どんなストーリーを想像したら良いのだろうか?これはベースをフィーチャーした藤原のオリジナルだが、お気に入りのようでよく演奏されている。ここでもベースの熱い演奏に圧倒される。次いで久保田早紀のヒット曲<異邦人>。1979年のリリースだがエヴァーグリーン化しつつある。アップテンポで演奏され、藤原のランニングベースが小気味良い。<イパネマの娘>から、かつてのボス、ホレス・シルヴァー作の<フィルシー・マクナスティー>、ソニー・クリスの演奏で有名な映画「ジョアンナ」のテーマ<アイル・キャッチ・ザ・サン>、同じくホレス・シルヴァーの演奏で有名になった<リベレイテッド・ブラザー>(解放された仲間)とファンキーな演奏が続き、サントルソラがエレピを弾く藤原のバラード<レイン>(雨)で幕を閉じる。
藤原清登は昨年5月、ミラノの東日本大震災復興支援コンサートでアンドレア・ツェンタッツオ(perc)、坂田明(as,b-cl)とのトリオや今年8月自らもプロデューサーを務めたJAZZ ARTせんがわ2013での演奏のようにインプロを中心とするハードコアな側面で知られるベーシストだが、一方では本アルバムで聴かれるようなファンキーなグルーヴ感溢れる演奏も得意とする。これは、デビュー間もない頃、NYで在団していたホレス・シルヴァー・グループ時代に刷り込まれたものだろうか。
長年続くこのトリオの久々の新作はドライヴ感に満ち満ちた快作である。ベース・ファンはもちろん、心ゆくまでジャズを楽しみたいファンにお薦めの1枚である。(稲岡邦弥)

追)今、気が付いたのだが、放映中のゲランのCMで<にくい貴方>が使われている!
http://www.youtube.com/watch?v=90xPAJ3PktQ

関連リンク:
http://www.youtube.com/watch?v=eiea4GOp0ss

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.