#  1037

『1966 Quartet/HELP! Beatles Classic』
text by 稲岡邦弥


DENON/日本コロムビア
COCO 85012 2,940円(税込)

1966カルテット;
松浦梨沙(ヴァイオリン、リーダー)
花井悠希(ヴァイオリン)
林はるか(チェロ)
江頭美保(ピアノ)

1.Help!
2.Can't Buy Me Love
3.And I Love Her
4.I Feel Fine
5.Hey Jude
6.Back In The U.S.S.R.
7.Hello Goodbye
8.Nowhere Man
9.Ob-La-Di, Ob-La-Da
10.Girl
11.Something
12.Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
13.Don't Let Me Down
14.Here There And Everywhere
15.Yesterday

編曲:加藤真一郎
録音:塩沢利安
プロデューサー:高嶋弘之

ビートルズをクラシック・スタイルでカバーするために2010年に音大OGで結成されたカルテット。『ノルウェーの森』でデビューし、クィーンとマイケル・ジャクソンを経て4作目のこのCDでまたビートルズに戻ってきた。『ノルウェーの森』で19曲を演奏し、この『HELP!』で15曲、だぶっているのは<ヘイ・ジュード>と<イエスタデイ>の2曲だけなので、ビートルズがいかに多くの名曲を輩出してきたか、今さらながらその才能に驚く。作曲は、1、4、8、10、13、がジョン・レノン、2、3、5、6、7、9、12、14、15がポール・マッカートニーで11の<サムシング>だけがジョージ・ハリスン。
編成はヴァイオリン2挺にチェロとピアノというイレギュラーだが、これはビートルズのふたりのヴォーカルにそれぞれ1挺ずつヴァイオリンを充てるためで、エネルギッシュな演奏が得意なリーダーの松浦がジョン、歌が得意な花井がポール、チェロの林がドラムのリンゴ・スター、ピアノの江頭がジョージ担当。但し、チェロとピアノは曲により適宜担当を変えているとのこと。もちろん、それぞれの奏者が各担当をなぞっている訳ではなく、編曲の加藤真一郎によりさまざまな趣向が凝らされている。加藤は78年生まれで、桐朋学園大学研究科(作曲)修了の後、ミュンヘン音大を卒業。マレイドラノフ国際2台ピアノコンクールで日本人デュオ初となる第1位を受賞、ソリストとしても都響や東フィル、京都市響などと共演する俊才。作曲家としては第13回芥川作曲賞候補となる実績を持つ。本作でも9<オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ>にシューベルトの「ます」(第4楽章)、14<ヒア・ゼア・エヴリホエア>にラフマニノフのメロディを取り入れるなどクラシックとの接点も巧みに見出している。
冒頭の<ヘルプ!>からまず驚かされるのは、カルテットのビート感とグルーヴ。これは単なるお嬢さん芸ではない。さらに、ロック・テイストを醸し出すためのさまざまな工夫。たとえば、ヴァイオリンやチェロの激しいアタックや強擦音、チェロの駒を擦ってブレスを表現するなどクラシックではタブー視されている奏法をアレンジに応えて敢えて取り入れている。
グループ名の「1966カルテット」の1966は、ビートルズの訪日年に因んでいる。このアルバムの成功は、来日当時東芝EMIのビートルズ担当ディレクダーだったプロデューサー高嶋弘之氏(御年79才!)のこだわりと、加藤真一郎の考え抜かれた編曲、それに鍛え抜かれた「1966カルテット」のアンサンブルだろう。音楽性とエンタテインメント性が適度にバランスのとれたレヴェルの高いカバー・アルバムである。(稲岡邦弥)

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