# 1038
『Zycos /Give it to me』
text by 剛田 武
CERBERA RECORDS CER-002 2,000円(税込) |
1. News
2. ランナー
3. Ancient Gift
4. E.J.
5. 通院通
6. Autumn Song
7. コメット
8. バイナリgirl
9. Parallel Dance
Zycos are:
服部正嗣 synth, vib, drums
岩見継吾 contrabass, synth
小森耕造 drums, pad
せぶまる vocal on 2, 7, 8, 9
北里彰久(Alfred Beach Sandal)vocal on 1
Produced by Zycos
Executive producer: Kohei Mitani
今では死語になってしまったが、5年程前までロック・シーンで「関西ゼロ世代」という呼称があった。2000年代(ゼロ年代)に関西から登場した若手で、マニアックな音楽性と個性的なパフォーマンスを展開するバンドを指していた。関西アンダーグラウンドの象徴的なバンド、ボアダムスの影響によるアヴァンギャルドな要素が特徴で、「ボアダムスの子孫」と呼ばれることもあった。ズイノシン、あふりらんぽ、オシリペンペンズ等が中心で、2000年代後半までこの括りのもとに、ユニークなバンドが続々登場した。その中で一際注目を集めたのがミドリだった。女性シンガー、後藤まりこを中心としたハードコア・オルタナティヴ・バンドで、セーラー服で過激なパフォーマンスを見せる後藤の破天荒ぶりが高く評価された。2008年ミドリに参加したのが岩見のとっつぁんこと岩見継吾だった。ただでさえケイオティックなミドリで、ジャズ直系のコントラバスを弾く岩見は、ヴィジュアルも含め、ゼロ世代の混沌の美学を象徴していた。
岩見がミドリ参加の前年に、MONDAY満ちるやKREVAなどのサポートで活動する小森耕造とスガダイローやラッパー志人等と共演する服部正嗣の二人のドラマーと結成したトリオがZycos。初期は服部がノイズとシンセを担当していたが、徐々に楽器の幅を広げ、ヴィブラフォンやドラムPADを導入し、ツイン・ドラムを使い分けるユニークなエレクトロ・ユニットになった。
待望のデビュー・アルバムは、岩見が参加するロック・ユニットAlfred Beach Sandalの北里彰久とアンビエントな女性歌手せぶまるをゲスト・ヴォーカルに迎えた異色作に仕上がった。クールなエレクトロ・レゲエ「News」で幕を開ける。北里の飄々としたヴォーカルと、中間部のゲーム音楽風のとぼけた電子音が、Zycosの雑食性とフットワークの軽さを物語る。汗をかかない人力ビートはクラフトワークのような音響テクノに通じる要素がある。随所に散りばめたサウンド・エフェクト的な電子音は遊び心たっぷりで、聴いていて微笑ましい気持ちになる。ジャズというと、未だに求道的なイメージで捉えられがちだが、ジャズの基本を押さえた上で非ジャズ演奏を繰り広げるZycosの肩の力の抜けた演奏には、ジャンルの垣根が消滅した現代に生きる表現者の柔軟な志向が色濃く現れている。
動画を観ると、ライヴ演奏ではかなり熱いインタープレイを展開するようなので、レコーディング作品とは別モノと捉えているのだろう。「Give it to me」のポストロック的なクールネスとライヴでのハードコアジャズ的な熱狂ぶり。Zycosは文字通り2度おいしいバンドだといえるだろう。(2013年9月20日記 剛田武)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
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#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
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#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
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#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
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