# 1055
『加古 隆クァルテット/QUARTET II』
text by 稲岡邦弥
エイベックス・クラシックス AVCL-25776(SACD-Hybrid) \3,150(税込) |
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加古 隆クァルテット:
加古 隆(piano)
相川麻理子(violin)
南 かおり(viola)
植木昭雄(cello)
1. 鎮魂歌
2. 太平洋の奇跡
3. ポエジー
4. テンペスト
5. キルトの家
6. 永訣の朝
7. 風のワルツ
8. 花と虫の戯れ
9. 睡蓮のアトリエ
10. われ一人
11. The Third World
12. 霧につつまれた街
録音:2012年12月19-21日 軽井沢大賀ホール
Recording producer & Sound engineer:Tak Sakurai
Producers:Takashi Kako & Hiroyuki Nakashima
コンポーザー/ピアニストの加古隆がパリ・デビュー40周年を迎え2点のCDをリリースした。1点は、インプロヴァイザーとしての演奏を集約したジャズ篇と、ソロといわゆる劇伴とよばれる映像のための音楽を集めたPoesie篇からなる2枚組『アンソロジー』(別掲 「Five by Five #1052」)で、ここに取り上げたのはもう1点の『クァルテットII』である。このクァルテットは3年前に結成され、CD『クァルテット』が1枚リリースされている。ソロかオーケストラをバックに演奏することが多い加古が、インプロヴァイザー時代にジャズ・トリオ「TOK(トーク)」の演奏を通じて「音で語り合い、感じ合」った体験、つまり「言葉を超えたコミュニケーション」を、「楽譜を介在させたクラシカルな編成の中でも」体験できないかと編成したものである。ちなみに、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロからなるクァルテットは、良く知られているようにクラシックでは「ピアノ四重奏」として古典的な編成である。このアルバムにはソロ、デュオ、トリオも収録されているが、加古がインプロヴァイザーとしての長い経験を持つ上に、弦楽トリオもそれぞれがソリストや室内アンサンブルで活躍しているだけにクァルテットとして躍動感に富み、きわめて多彩な表情をみせる。オーケストラの重厚な響きや壮大さの代わりに演奏者同士の親密な会話を楽しめる内容だ。
アルバムは、ピアノ・ソロによる東日本大震災の犠牲者に捧げられたレクイエム<鎮魂歌>で幕を開ける。感情を抑えた演奏を通して鎮魂とともに再生への希望が聴き取れる。2、3、4、5と4曲クァルテット演奏が続く。2、5は映像のための作品で、4の<テンペスト>は本作のための書き下ろし。快い緊張感が漲る密度の濃い内容と演奏。2の<太平洋の奇跡>はサイパンの激戦を描いた映画のテーマで執拗な和音の連打は加古作品では珍しい。3<ポエジー>は、加古がインプロヴァイザーと訣別する覚悟を決めることになるピアノ・ソロのために書かれた作品だが、ここではヴァイオリンが最初のテーマを弾き、ピアノは後テーマを弾くことになる。<永訣の朝>は、最愛の妹との永の別れを詠った宮沢賢治の同名の詩にインスパイアされてつくられた楽曲で、ピアノとチェロが賢治の張り裂けんばかりの胸の内を明かし尽くす。演奏内容の詳細な紹介はリスナーのCDを聴く興味とスリルを殺ぐことになるので控えるべきだろう。いつものように確かな手応えを残してくれるとても丁寧に作られたアルバムで、加古自身の手になる曲の解説も付されている。(稲岡邦弥)
追悼特集
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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