# 1057
『Keith Jarrett/No End』
text by 多田雅範 (Masanori Tada)
ECM 2361-62 | ![]() |
Keith Jarrett (electric guitars, Fender bass, drums, tablas, percussion, voice, recorder, piano)
CD 1
Part I - X
CD 2
Part XI - XX
Recorded 1986 at Cavelight Studio, NJ
Producer: Keith Jarrett
Engineer: Keith Jarrett
Executive producer: Manfred Eicher
*プロデューサーより 註:このCDは音量を上げて聴いて下さい(とくに、Track 2〜20)。音量が小さいと内部の詳細を聴き漏らします。
みんなと遊びたいんなら、遊びたいと言えばいいのに。
ヤコブ・ブロの新作とドン・チェリーの旧作を聴いていた午後。キースの新作『NO END』をCDトレイに入れる。
おおっ!このパーカッションの感じ、”独りアメリカン・カルテット”を演りたいのか?ギターが主役なのかー。ヤコブ・ブロの空間性を感じないこともない、ドン・チェリーの自由な精神を感じないこともない、グルーヴする感じは、あれれ、ジョー・マネリ尊父が息子と参加していた99年当時のクラブ・エルフの悦楽につながっているのではないか?
怖ろしい。ジョー・マネリとキース・ジャレットが共演する可能性はあったのか?それはポール・モチアンが仲介することによって。トーマス・モーガンが立ち会えた可能性?...羽生名人に負けない光速の読みでジャズ史を妄想するおれ。
(トキメキはいつまで続いたのだろう)
キースの新作『NO END』なんと2枚組、自宅での多重録音、ギター、ドラムス、フェンダー・ベース、...タブラ?、...ヴォイス?
キースにはVortex の『レストレーション・ルーイン』(1968)という、若き日の多楽器(11種類)によるソロ作品がある。ファンには中古盤屋を歩き回るか、マニアックな先輩に聴かせてもらうか、ジャズ喫茶のオヤジの顔をゆがませてリクエストして聴くしかない盤だったが、CD化されて広く聴かれるようになった。68年のフォークやサイケデリックを描きたい才能ある若者の冒険。歌うジャレット、判定不能。
キースの自作ソロとして、『スピリッツ』2CDとは並列してはならない。これを問題作として片付ける神経がわからない。『スピリッツ』はまさに精神の根源に向かって奏者が降りていった、稀有な作品である。あれこそ、アートであり、体験であった。
さて、『NO END』について。ギターをこんなに上手く弾けていいのか、ドラムやタブラをこんなに、と、驚くのはキース・ジャレットという演奏家が、という前提であって、それがなければECMでCD化されるべき音楽ではない。
モンダイは、なぜ、86年録音の自宅録音が今、マーケットに並ぶのかだろう。キャリアをふりだしに戻して、キースは引退するのだろうか。CD化された『レストレーション・ルーイン』の若者リスナーへの受けが良く、気をよくして蔵出しした?これを「世に知らしめるべき」と、ほんとうにキースは考えた?
楽しそうなグルーヴをするひとり5役の演奏、そもそも共に音楽すること、それがグルーヴではないのか、ひとり4役のインタープレイ、成立はしていない、なんという業の深い音楽。
ふすまやたたみや柿の木の、日常の何気ない風景を映し続けるホームビデオ。時折、映ってはならない空間に死相にゆがんだ表情が浮かんでいる。なるほど、そういう需要は、あっていい。(多田雅範)
追悼特集
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
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シスコ・ブラッドリー
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#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
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Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
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