僕は15歳だった。東京の高校に進学し渋谷に下宿。文化放送の電話リクエストを聞いていて突然「危険な関係のブールース」がかかった時の衝撃は今でも鮮やかだ。
のっけからポール・ニザンのアデン・アラビア風になってしまったが、扇情的なテーマに続いてリー・モーガンの熱血のソロで身体中の血が滾り、これだーっと叫んでしまっていた。今までの勉強漬けの毎日で、鬱々と澱んでいたものが一気に開放された気分になったのだった。ジャズを知った日である。それからは渋谷のデュエット、新宿は汀に入り浸りの日々でジャズを聴きまくった。爾来アート・ブレイキー＆ジャズ・メッセンジャーズはアイドルだ。
とくにリー・モーガンは大好きだ。彼はまさにトランペットのカリスマだ。IVYスタイルで超かっこ良かったし、今でも輝きを放つOnly ONEの存在だ。
あれから５３年になんなんとしているが、いまだにジャズだ、リー・モーガンだ！
58年録音のオランピア、サンジェルマンの時、彼は何と20歳!!! 凄いなあ。
この間に映画の「殺られる」も録音している。61年の初来日コンサートも行った。
さてこんなヤル気満々で世界中をファンキー・ジャズで魅了したメッセンジャーズの未発表アルバムが昨年１１月に55 Recordsから発売されたのだ。
『ライヴ・イン・アムステルダム 1959』。1959年11月14日、クラシックの殿堂コンセルトヘボウでのコンサート録音。
メンバーは、“ナイアガラ瀑布”ドラムスの巨人、ファンキー・ジャズの立役者アート・ブレイキー、この年、若干21歳でダウンビート誌のクリティック・アワード、ニューヨーカー、ニューズウィークで受賞したとアナウンスされるリー・モーガン(tp)、ジャズ界の新星と紹介される入団したばかりで音楽監督を任された26歳のウェイン・ショーター(ts)、ウォルター・デイヴィス(p)、ジミー・メリット(b)というクインテット編成。

DISK 1；Ray’s Idea、Along Came Betty、Nelly Bly、Goldie、The Theme
DISK 2；Bouncing With Bud、Blues March、Haina、Moanin’、Justice、The Themeという2枚構成で、どれも馴染みのある選曲。ジャズ研でもよく演奏した懐かしい曲ばかりである。譜面を見ればお分かりになると思うが（譜面を掲載すると著作権が発生するので割愛）どれもメロディアスでシンプルだ。これをスウィングさせるのが難しい。ジャズの教科書的な名曲の数々だ。
ここでもリー・モーガンのソロは素晴らしいの一言に尽きる。彼のコード解釈はいつも凄いなあと只ただ聴き惚れてしまうのだ。独特の音色、うねりもたまらない！チッビってしまうぞ。
リー・モーガン、いやメッセンジャーズを聴くことは、我々自身を奮い立たせることなのだ！
ジャズ・ファンを自称する人、必聴盤。ズバリ！これは宝だ。（原田和男）