#  1068

『ドビュッシー作品集Vol.1/野平一郎』
text by 藤原聡


ライヴノーツ(ナミレコード)
WWCC-7741
2,940円(税込)

野平一郎(ピアノ)

01.2つのアラベスク 1.ホ長調
02.2つのアラベスク 2.ト長調
03.前奏曲集 第1集 1.デルフォイの舞姫たち
04.前奏曲集 第1集 2.帆
05.前奏曲集 第1集 3.野をわたる風
06.前奏曲集 第1集 4.夕べの大気に漂う音と香り
07.前奏曲集 第1集 5.アナカプリの丘
08.前奏曲集 第1集 6.雪の上の足跡
09.前奏曲集 第1集 7.西風の見たもの
10.前奏曲集 第1集 8.亜麻色の髪の乙女
11.前奏曲集 第1集 9.とだえたセレナーデ
12.前奏曲集 第1集 10.沈める寺
13.前奏曲集 第1集 11.パックの踊り
14.前奏曲集 第1集 12.ミンストレル
15.ベルガマスク組曲 1.前奏曲
16.ベルガマスク組曲 2.メヌエット
17.ベルガマスク組曲 3.月の光
18.ベルガマスク組曲 4.パスピエ

録音:2012年8月16日〜17日 品川区立文化センター
プロデューサー:満川隆
レコーディング・エンジニア:池田高史

野平一郎、待望のドビュッシー録音第1弾である。言うまでもなく野平一郎は作曲家でもあるが、これはいかにも「作曲家」の弾くドビュッシーである。まずはそう言ってよいだろう。雰囲気に流される箇所が全くなく、ルバートも控えめである。そして、あらゆる箇所が実に明確かつ端正に音化されており、ちょっと注意すれば楽曲の構造が手に取るように分る。しかし、さらにすばらしいのは、単に楽曲解説的なドライな演奏になっている訳ではまったくなく、控えめな詩情と情感が常に一貫して感じられる点である。いわゆる知・情・意のバランスがこれほど見事な均衡を保っているドビュッシー演奏はなかなかないのではあるまいか(例えばミケランジェリは音響は完璧だがドライと思うし、フランソワの独特の味わいはすばらしいが技術的には難しい面もありますし…。勿論名演なのは言うまでもないですが)。有名な「アラベスク」の2曲、または「ベルガマスク組曲」の特に「月の光」などは、最初は骨太のタッチによる明晰な音作りにもう少し「砂糖の甘み」が欲しいかも、などとも感じたのだが、2度目に聴いた時にはべたつかない抒情が逆に新鮮に感じられてすっかり感心してしまった。前奏曲集第1巻はさらに見事で、注目して頂きたいのが多層的な音の絡みの解きほぐし方。「帆」、「西風の見たもの」や「沈める寺」でその手腕が特に冴え渡る。この演奏、これらの曲のファースト・チョイスとしてもよいし、既に様々な演奏に接している方にもきっと新たな聴き方の提示と発見に満ちていることと思う。続編に大期待!(藤原聡)

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