# 1069
『Elton Dean, Paul Dunmall, Paul Rogers, Tony Bianco/Remembrance』
text by 剛田 武(Takeshi Goda)
NoBusiness Records NBCD 59-60, 2013 |
Elton Dean - alto sax
Paul Dunmall - tenor sax
Paul Rogers - bass
Tony Bianco - drums
CD 1:
1. Trio I (Dunmall / Rogers / Bianco) 23'27"
2. Quartet (Dean / Dunmall / Rogers / Bianco) 37'32"
CD 2:
1. Duo (Rogers / Bianco) 28'30"
2. Trio II (Dean / Rogers / Bianco) 26'01"
Recorded 9th February, 2004 at Steam Room Studios, London
Recording engineer: Jon Wilkinson
Photos by Gérard Rouy except photo of Tony Bianco by Christopher Trent
Mastered by Arūnas Zujus at MAMA studios
Design by Oskaras Anosovas
Produced by Danas Mikailionis
Co-producer: Valerij Anosov
プログレッシヴ・ロックやジャズ・ロック、特にカンタベリー・ロックを愛好する者ならば必ず出会う名前がサックス奏者のエルトン・ディーンである。特に1969年〜72年に在籍したソフト・マシーンで展開した自由度の高いプレイは、プログレ・ファンにとってのジャズ入門編とも言える。ソフト・マシーンでロック・ファンに接近する一方で、ディーン本来の姿は、デレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、キース・ティペット、ジュリー・ドリスコール、ロル・コクスヒル等と並ぶ英国フリー・ジャズの闘士である。
3人の気心の知れたミュージシャンと2004年2月9日(なんと2006年2月8日の命日のちょうど2年前!)にロンドンで録音された本CDは、1966年に英国ブルースの父ロング・ジョン・ボールドリーのバンドBluesologyに参加して以来、40年に亘り英国音楽の最前線を歩んできたディーンの留まることのない全力疾走の記録である。
ディーンは2000年頃から、本CDに参加したアメリカ人ドラマー、トニー・ビアンコと、エンジニア兼ギタリストのジョン・ウィルキンソンと共に「フリービート」というプロジェクトをスタートした。拍子記号に従いながらフリーなプレイを展開するというコンセプトは、作曲された楽曲と完全なフリー・ミュージックの中間に位置するもので、一定のリズムと即興的なフレーズのバランスにより破綻することなく自由度の高い表現を可能にする。ビアンコが現在でも追及するこのコンセプトは、ディーン/ビアンコ/ウィルキンソン名義のCD『NORTHERN LIGHTS』(2006)に結実する。そう考えると、このCDに収録された2004年のセッションは「フリービート」拡大の実験を兼ねていたのではなかろうか。『NORTHERN LIGHTS』のダンサブルな反復ビートとは異なるが、躍動的なスピード感に貫かれた演奏には「フリービート」のコンセプトが反映されているように思われる。また、全曲ビアンコが参加していることから、主役はトニー・ビアンコとエンジニアのジョン・ウィルキンソンだと言えるだろう。収録された4つのセッション中、ディーンの参加が半分に過ぎないことも納得できる。
「ソニー・ロリンズとエヴァン・パーカーの両者の資質を兼ね備えたサックス奏者」と評されるポール・ダンモールの豪快なブロウが印象的な「トリオ 1」(CD1-1)、ドラムとベースが高密度に疾走する「デュオ」(CD2-1)を含め、約2時間の演奏には英国ジャズが辿り着いた表現の高みが示されている。この2年後にエルトン・ディーンは惜しくも帰らぬ人となり、デレク・ベイリーとロル・コクスヒルも天国へ召されてしまったが、歴戦の闘士が不在でも英国ジャズの前途には希望の光が差している。(剛田武 2014年1月14日記)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
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