# 1072
『BRATSCHE!〜ヒンデミット ヴィオラ作品集』
text by 藤原聡
NAÏVE V5329 オープン価格 |
<曲目>
ヴィオラ・ソナタ ヘ長調作品11-4
無伴奏ヴィオラ・ソナタ作品25-1
白鳥を焼く男
葬送音楽
<演奏>
アントワン・タメスティ(ヴィオラ) マルクス・ハドゥラ(ピアノ)
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)フランクフルト放送交響楽団
<録音>
2012年12月/2013年4月、9月、ヘッセン放送・センデザール、フランクフルト
プロデューサー: ANDREA ZIETZSCHMANN
タメスティにはヒンデミットのヴィオラ作品を録音して欲しいと思っていた。それが実現して慶賀の至り(ちなみに昨年のヴィオラ・スペースでタメスティは当盤収録曲を弾いている。未聴だが...)。アルバムタイトルは「BRATSCHE!」(ドイツ語でヴィオラの意味)。全4曲、ヒンデミットの作品は晦渋という思い込みを一掃するような親しみ易い快演・美演に仕上がっていると思う。タメスティの特徴は、何といってもその音のしなやかな美しさと、見事なフレージングにある。それはすでにアルバム冒頭のヴィオラ・ソナタ作品11-4で明らかだ。出だしのあの美しくも何とも不思議な浮遊感のある旋律の歌わせ方の見事さ。第2、3楽章は「主題と変奏」から成り立っているのだが、分りやすい変奏曲ではなく主題の断片がチラチラ表れていくという、聴き手に集中を強いる複雑な作品と思うけれど、タメスティの演奏だといい意味で素直に聴くことができる。部分部分の楽想の性格の弾き分けがはっきりしているためと思う。無伴奏ヴィオラのためのソナタ作品25-1は、ピアノ伴奏付のソナタに比べると無骨な印象があるけれど(これは無伴奏ヴィオラ・ソナタ全4曲について言える)、この演奏だと、繰り返すようだがとにかくしなやかなのである。よりゴツゴツした演奏を好む方からすればなだらか過ぎる、との意見も出るかも知れないが、この痺れるようなヴィオラの美感には堪えられないものがある。ちなみに、有名な「野生的に、音の美しさはどうでもよい」と指示のある第4楽章が非常に美しく弾かれています(笑)。そして、後半2曲はパーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送響との「白鳥を焼く男」、「葬送音楽」。ここでも、パーヴォの紡ぎ出す透明で見通しのよい、敢えて言えば「軽め」の音作りとタメスティの解釈の方向性がマッチしている印象で、じつに見事な演奏に仕上がっている。前者での諧謔味、後者での透明な悲しさの表出がじつに素敵。この1枚、ヴィオラ好きは大必聴だし(この音だけでドンブリ飯3杯はいけますね)、ヒンデミットは「ウェーバーの主題による交響的変容」と「画家マティス」位しか聴いたことのない、というファンが「次に攻めるヒンデミット」として聴くにも最適ではなかろうか。(藤原聡)
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